「裸の王様」が深刻化
大統領はその後も「戦闘終結に向けたイランとの協議が進行中だ」としながらも「彼らは信じられないほどの2枚舌だ。攻撃中止で斬首に乗り出す前の最後の機会を与えた」などとイラン指導部を批判。弾薬不足についても「米国には莫大な量の弾薬がある」と強がりをまくしたてた。
弾薬不足については、大統領が7月末ヘグセス国防長官に激怒したと報じられたが、米紙によると、弾薬不足が解決済みと思っていたのに「なぜ誤解させられていたのかの理由を長官に問い詰めたもの」という。しかし、大統領に正確な情報が届いていないとの重大な疑問が生じた。弾薬不足はその一例だ。
以前から言われてきたことだが、絶対的な忠誠心と独裁的な手法を採る大統領には側近らが不都合な情報を伝えない。大統領には心地よい情報しか入らず、それでなくても「裸の王様」なのに、その度合いが深刻化しているのだ。
CNNはケイン統合参謀本部議長がイラン戦争からの「出口」を探っていると伝えたが、大統領には入っていないようだ。同議長は空爆だけでは政権の目標を達成できないとして、バンス副大統領らと協議しているという。
イラン「逆封鎖」や制裁解除を要求
トランプ大統領は8月6日「戦争は近いうちに終わる」と述べたが、現在直接行われている協議はイランとオマーン間によるもので、米国はオマーンの後ろ盾として間接的に協議に参加しているにすぎない。協議は最終段階に入っており、ホルムズ海峡の航行方式の暫定合意がまとまる公算が強まっていた。
米メディアなどによると、暫定合意案は海峡を通過してペルシャ湾に入る船舶はイランの領海を航行し、海峡からアラビア海に出る際にはオマーンの領海を航行する仕組み。オマーンの領海を通過するには「イランと調整の上」という条件が付いており、事実上イランに「拒否権」が与えられているようだ。
暫定合意案の期間は「60日間」で、関係国は30日以内に海峡の中央航路から機雷を除去する作業を行う。期間は延長が可能。この間は通行料などの料金の徴収はない。しかし、イラン最高安全保障委員会のゾルガドル事務局長が8月8日、ホルムズ海峡開放の条件を要求したことから先行きは見えなくなった。
米国はアラビア海で、イランの港湾に出入りする船舶を阻止する「逆封鎖」を続けているが、開放の条件は「逆封鎖」の解除の他、制裁解除や凍結資産の解除、周辺地域からの米軍撤退、戦争被害の補償を要求。イランへの侵略やどう喝の停止、レバノンのヒズボラなどイランの同盟者への攻撃中止を求めている。
同事務局長は「米国が行動を改めなければ海峡が開放されることはない」と一歩も引かぬ構え。オマーンとの交渉がまとまっても、米国が要求に応じなければ海峡の封鎖は継続するという厳しいものだ。背景にはイラン国内の実力組織である革命防衛隊が強硬論を主張している事情がある。
