2024年4月27日(土)

World Energy Watch

2014年8月8日

 当たり前だが、生産人口の減少とデフレには関係がない。日本で需要が落ち込みデフレになったのは、多くの働く人が一人当たり付加価値額の相対的に高い製造業から、相対的に付加価値額が低い医療・福祉の分野に移動したからだ。要は平均給与の減少に輪をかけて、給与の高い人が減り、給与の低い人が増えたので消費も不振になった。図-1は日本の産業別労働人口の変化を、図‐2は業種別の給与を示している。製造業、建設業から医療・福祉に約300万人の移動があるが、この300万人の人達の給与は大きく下落している。消費も落ち込むわけだ。デフレの正体は産業構造の変化に伴う、付加価値額、即ちGDPの減少、給与の減少、消費の落ち込みだ。

 データをよく読むことが必要だが、『里山資本主義』でも同じような早とちりがありそうだ。

里山資本主義が目指すのは
多くの人が幸福な社会ではない

 『里山資本主義』には、自給自足で生活する人の話が出てくる。何により幸福感が得られるかは人により異なるから、自給自足の畑仕事と木片ストーブの生活を好む人がいてもいい。しかし、多くの人が自給自足経済を選択すると日本経済は壊滅する。最貧国の多くは自給自足経済から抜け出そうとしている。自給自足では国民生活が困窮するからだ。

 日本が直面するいくつかの問題は貧困とも絡んでいる。例えば、児童虐待は貧困家庭で発生することが多いと報道されている。自殺と犯罪の背景にも貧困があるだろう。2000万人の貧困層と200万人の生活保護受給者を抱える社会で、自給自足可能な人をどの程度抱えられるのだろうか。

 日本は燃料の輸入に27兆円、食料の輸入に6兆5000億円など81兆円を超える輸入を行っている。それを賄っているのは輸送機器、鉄鋼、化学製品などの輸出70兆円だ。工業製品の製造がなければ、食料輸入の代金も出せなくなる。いまは、海外投資の配当で経常収支は何とか黒字だが、製造業が衰退すれば、これもなくなる。日本では、自給自足で生きていける人の数は限られている。


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