酷暑の熊本に「同情するなら風送れ」
テレビドラマ『家なき子』(1994年)の不朽の名セリフを忘れてはならない。
「同情するなら金をくれ!」
薄幸の少女の怒りをはらんだ切り口上は、熊本にも当てはまる。同情は、される側にとって一文の価値もない。同情する側は、同情している自分に酔っている。このナルシシズムこそが、同情される側を激怒させる。
東日本大震災の際にそうであったように、今後も「同情するなら金をくれ」の数々のパロディがインターネット上で踊るであろう。「同情するなら」の後に続くのは、「金」に象徴される具体的な方策である。ライフラインの確保すら困難な地域なら、「水をくれ」、「便器をくれ」、「ガソリンくれ」などの切迫した訴えが聴かれよう。
平成28年熊本地震と異なり、今回は未曽有の猛暑である。二重災害が今後の災害関連死を生みかねない。
そこで、経済産業省は、避難所向けのクーラー3300台を、自衛隊輸送機を用いて、ピストン輸送している。民間企業も動きは早く、家電量販店は冷房を、空調メーカーは空調設備を、コンビニは水・食品・冷却用水を、というように、企業のコア・コンピタンスを災害資源に変換している。
携帯ファンや空調ウェアは、酷暑下の災害にあって、「同情する」より役に立つ。停電中の在宅避難や、屋外での片付け作業・ボランティア活動には、熱中症のリスクが伴う。
酷暑対策資材は今回の熊本災害では間に合わないかもしれないが、今後、真夏の大災害への備えとして一考に値する。ウェアラブル送風グッズと附属品を1セットとして、自治体、自衛隊、企業などが備蓄し、メーカー・小売業・物流会社と自治体が平時に協定を結び、災害時の供給網を作るのも合理的であろう。
酷暑の熊本に今必要なのは、涼しい風である。「同情するなら風送れ」であり、実効性のある援助こそが求められるはずである。
災害時に求められる「鳥の目」
災害医療の活動は、「専門家が被災者の話を聴く」という従来の「こころのケア」イメージとは異なる。外から被災地に赴く専門家は、主役ではなく、わき役である。彼らの仕事は、後方支援である。あくまでも、主役は熊本の精神保健関係者であり、この人たちが本来の実践を再開するために、その条件を整えるのが派遣された専門家の役割である。
ここでは、J-SPEED(災害時診療概況報告システム)とEMIS(広域災害救急医療情報システム)について触れておく。
災害時医療にあっては、地域における需要と供給を俯瞰することが必要である。J-SPEEDは、災害医療チームが用いる診療日報電子システムだが、これは、医療保健ニーズを把握する目的でも活用される。EMISの方は、医療供給能力を把握するため、どの医療機関が機能し、どこが被災し、何ができ、何ができないのかを可視化する。
