高まるライフセーバーの必要性
小峯の人生を方向付けた片瀬西浜海岸の事故から30年以上が経過し、国内のライフセーバーはすでに4万人の有資格者を超えるまでになっている。しかし、周囲を海に囲まれた日本の海岸線は広く、とても十分な数とは言えない。
また、活動を支える制度面でも学生、社会人を問わず、ライフセーバーの奉仕の精神を基盤に成り立っているのが現状である。公務員として立場が確立されている国々に比べ、水辺の事故を防ぐための国としての仕組みが整備されているとは言い難い。
地震、津波、台風、高波、集中豪雨など、自然災害が頻発するなか、ライフセーバーの必要性が高まっていると考えられる。たとえば津波に対しては、日常的に地域の予防対策(減災)を講じるともに津波警報時は周囲を促し、率先避難者として範を示すなど、人の力で津波を止めることは出来なくても、被害を減らすための役割は大きいはずである。
救急救命の知識と技術を持つ者が増えれば、心肺停止状態の人を前にしても救える可能性が高まるということだ。
小峯は現在、中央大学教授として、毎年起こる水辺の事故の原因究明のため、さまざまな気象データから潮流を分析し、どのような状況の中で溺水が起きたのか、生命倫理の見地からのアプローチを進めると共に、首都直下型地震、東海・東南海地震、南海トラフ地震など巨大地震を想定した防災、減災対策にも取り組んでいる。
【小峯 力(こみね つとむ)】
横浜生まれ。87 年にオーストラリアにてライフセービング・イグザミナー(検定官)資格を取得。日本初のライフセービング指導者認定を受ける。日本ライフセービング協会理事長、国際ライフセービング連盟(ILS)教育委員、日本臨床救急医学会専門委員、海上保安庁アドバイザー、日本海洋人間学会副会長に就任。日本体育大学大学院助手、東京大学医学部看護学校講師、流通経済大学助教授・教授、同大学院スポーツ健康科学研究科(救急教育学)教授を経て、2013 年より中央大学教授。
*日本ライフセービング協会(JLA)の詳細はこちらへ。
http://www.jla.gr.jp/
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