英フィナンシャル・タイムズ紙の3月9日付社説が、米国の原油輸出禁止策は、1970年代のOPECの石油禁輸策に対抗したもので時代遅れであり、廃されるべきである、と述べています。
すなわち、米国の原油輸出禁止策は、1970年代のOPECの石油禁輸策に対抗するために制定された過去の遺物である。
この政策のため、米国市場で原油は供給過剰となっている。
米国は、依然として原油の輸入国である。シェール・オイルは軽質で硫黄分が少なく、米国の製油業界が好む重質で硫黄分の多い輸入原油の代替にならない。
その結果、米国内と世界市場の原油価格の差が拡大した。米国産原油の基準価格であるWTI(West Texas Intermediate) は世界で取引される原油の基準価格のBrent(北海ブレント)より9ドルも低い。9ドルというのは、財政的に厳しい米業界にとっては切実である。
米国は原油の輸出を制限していることで、国内の原油の生産の足を引っ張り、ロシアやサウジといった競争者を助けている。米国のエネルギー安全保障のためとされた政策が、実際には原油の純輸入を増加させている。
最近超軽質原油(いわゆるコンデンセート)の輸出が解禁されたのは正しい方向への小さな一歩だが、最善の解決策は、すべての原油の輸出禁止を廃止することである。
米国の政治家は、輸出を解禁するとガソリンの小売価格が上昇した場合非難されるとして及び腰だが、米国の原油生産者が厳しい状況に置かれていることから、政府と議会はそのリスクを取るべきである。
米国は世界的な原油価格競争で、片手を縛られた状態で戦っている。時代遅れの政策をやめ、公正な戦いをすべきである、と主張しています。
出典:‘US makes a strategic error in the oil price war’(Financial Times, March 9, 2015)
http://www.ft.com/cms/s/0/72f68904-c65c-11e4-add0-00144feab7de.html#ixzz3UE3SxvuW
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米国の原油輸出禁止策は、石油ショックの直後には、確かに米国のエネルギー安全保障政策として意味がありましたが、原油の純輸入を増加させているという点では意味がありません。むしろ輸出を解禁し、国内の原油産出を増やす方がエネルギー安全保障政策として適切です。これは、社説が指摘する通りです。