2024年4月26日(金)

山師の手帳~“いちびり”が日本を救う~

2015年12月30日

ジーンマリック氏とディアスポラ(離散者)と
コンフリクトミネラル(紛争鉱物)

 ジーンマリック氏とは20年近くの知り合いである。彼のルワンダの工場を訪問して以来3年が経っているがジーンマリックは、ルワンダの鉱業組合の会長で自らもタングステンやタンタルの鉱区を持っている企業家でもある。彼が今回のセミナーのプレゼンテーションも引き受けてくれたおかげでパート1に書いた紛争鉱物のセミナーは大成功だった。

 また、ジーンマリック氏はルワンダにおける鉱業制度に対する決定権にも影響力を持つ政治家的な側面も持つ経営者である。

 この一年間はレアメタルの市況が高騰から下落に転じたために鉱山経営については経済的影響が資金不足となったはずだがルワンダでの鉱山の規模ではトップクラスである。

 さて、このジーンマリック氏もディアスポラでルワンダ内乱時期にコンゴ民主共和国に一時期逃げていたが、国内が安定したので十数年前から帰国して鉱山の開発を推進してきた人物である。現在、コンフリクトミネラルを採掘している企業家の大半はディアスポラである。彼らは海外で活動している間に海外の産業資本や金融資本をルワンダに誘導してきたのである。彼らは大変、情報通で海外から帰国した連中たちが海外からの取引先を手玉にとって競争原理を働かすようなところもなかなか強かである。

ジーンマリック氏(右から5番目)と筆者(右から4番目)

 ジーンマリック氏は日本からのデレゲーションに彼の鉱山の採掘現場のプラントツアーもアレンジしてくれたのだが、鉱山に到着するなり鉱山の数百人の社員の歓迎はルワンダ式のダンスを披露してくれたので日本の訪問団は度肝を抜かれたほどだった。日本人の強みも弱みも良く理解しているから普通の日本人なら多分相手にならないだろうと実は思っている。

コルタン盗難事件と内陸国の悩み

 今年になってからほぼ毎月ルワンダ産のタンタルとタングステンを対日輸出している。コルタンとはタンタルとニオブが混ざっている精鉱であるが20トンコンテナ一本が約6500万円もする高価な素材である。当社はルワンダからは従来はベルギー系や英国系のトレーダー経由で輸入していたが、コンフリクト・フリーの証明付きタグとともに直接輸入が可能になったために、トレーダーからの商流を直接取引に切り替えたのである。

 初めの数回は順調に輸入がなされたのだが今年の夏に神戸港に到着したロットの中からドラムが巧妙にすり替えられており、中身はゴロ石が入っていた事件が発生した。

 AMJの担当者はルワンダの鉱山まで行って立会をし、タンザニアのダニエスサラム港まで確認に行ったにもかかわらず現物ドラムだけがすり替えられていたのである。

 本来なら調査のために海上保険事故の求償にかなりの時間がかかるのだが、港湾担当者と輸送会社との内部の犯行であることが突き止められたので保険金の支払いでトラブルになる事はなかったので不幸中の幸いであった。

 いまどき、このような「荷抜きの事故」の発生は考えられないのだが、取引関係者は「やはりアフリカリスク」は、なかなか回避できないという感覚であった。ルワンダは内陸国であり、積出港はタンザニアのダニエスサラム港かケニアのモンバサ港になる。南アフリカのダーバン港は距離からみて合理的ではないが内乱の時期にはDRCのカタンガ州からダーバンまで運んだこともある。

 いずれにしてもアフリカの輸送インフラの安全性は将来のテーマでもある。


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