家庭内に「会議」を持ち込む
こうして見てくると笑い話のような家族のすれ違いですが、実際問題として、多くの家庭で同じような会話が繰り広げられています。
なぜそうなってしまうかといえば、「家族だから分かるはず」と、お互いに対する甘えがあるからです。
考えてもみてください。ビジネスの場面で、こんな会話をするでしょうか?
最初の母の会話にしても、これが仕事の報告と相談なのであれば、同僚または上司から「つまり、困っていることは何で、どうなればいいのですか? 要点を整理してください」と求められることは確実ですね。
母も、家の外の人と話すのであれば、「自分の目に映ったこと」「考えたこと」「困っていること」「頼みたいこと」をもう少し整理して話せたことでしょう。
ところが家族相手だと、全部言わなくても分かってもらえるだろう、分かって欲しいという気持ちが無意識のうちに働いてしまうのですね。先の例だと、母に限らず、父も子も「全部聞かなくても自分は分かっている」「全部話さなくても分かってくれるだろう」という気持ちが見え隠れしています。
では、どうすれば気持ちのすれ違いを減らすことができるでしょうか。
先ほど、ビジネスの場面なら整理して話そうとしたはず、と言いました。
とすれば、これを応用すればいいのです。つまり、家庭内に「会議」を持ち込んでしまうという発想です。
手元の辞書で「会議」を調べてみると、こうあります。
関係者が集まって(一定の手続きにのっとり)議題について意見を出し、相談して、意思決定すること。
「関係者」「一定の手続き」「議題」「意思決定」が要素になっていますね。
皆さんも、仕事で会議を行う際にはこれらのことを意識していると思います。
逆に、「今日の会議の議題は何ですか?」と聞いて、「それをこれから相談しようかと思うのですが」と言われたら、「はい! 解散!」となりますね。
「意思決定すること」が会議の「目的」なのに、「議題」が分からなければ何について決めればいいのかも分からないからです。