2024年4月16日(火)

シリーズ「東芝メモリを買ってほしいところ、買ってほしくないところ」

2017年6月5日

破綻した四日市工場の買収でマイクロンは有利な立場に

 仮に本当に、四日市工場が経営破綻したとしよう。破綻したとしても、それは帳簿上の話であって、四日市工場は、NANDをつくり続けている。1万人以上いる社員もこれまで通り、勤務している。そのような状態で破産管財人が選定され、四日市工場の資産査定が行われ、売却先が決められる。

 その際、マイクロンだけでなく、SK Hynixやサムスン電子などの同業他社、東芝のNANDを必要とするホンハイ、アップル、ブロードコムなども名乗りを上げるかもしれない。

 しかし、マイクロンは圧倒的に優位な立場に立てる。破産管財人は、四日市工場をうまく運営して、NANDビジネスを止めず、雇用を維持してくれる、そんな買収先を選定するだろう。

 まず、NANDビジネスをやったことがないホンハイ、アップル、ブロードコムは、第一選定から落ちる。次に、同業他社のマイクロン、SK Hynix、サムスン電子のうち、どこが良いかという2次選定に移行する。

 すると、マイクロンには、2016年まで17年間、四日市工場でサンディスクのCEOを務めていたメイロトラ氏がいることが、俄然、クローズアップされる。メイロトラ氏は破綻した四日市工場を知悉しているし、マイクロンはNANDビジネスにも精通しているから、安心して四日市工場を任せることができると考えるだろう。

 つまり、破綻した四日市工場の買収において、マイクロンは極めて有利な立場に立つことができる。そして、二束三文で、世界最大規模の四日市工場とそこで働く技術者を手に入れることができるのだ。

東芝とWDは早期に和解を

 結論を述べよう。確実に言えることは、東芝とWD泥沼のバトルは、確実に両社を弱体化させる。そして、その機に乗じて、競合他社は、漁夫の利を得ようと戦略を練り、既に実行に移している。

 東芝とWDは、子供のケンカをやっている場合ではない。両社は大人の話し合いをして早期に和解し、両社の妥協点を見出すことである。それができなければ、両社は衰え、破綻して、競合他社の餌食になるだろう。とにかく、ケンカをやめてくれ。

 読者の皆様、10回の連載にお付き合い頂き、誠にありがとうございました。またどこかでお会いしましょう。

【訂正】
「Wedge2017年6月号」に、『東芝メモリの未来を奪う外為法適用 的外れの議論が生む数々の「弊害」』という記事を寄稿しました。記事の中に、2か所間違いがありましたので、この場を借りて訂正させて頂きます。

1)32ページの「東芝メモリの2次入札を検討している4陣営」の表の中で、KKRについて、「独占禁止法」の欄に「×」と書かれていますが、KKRは独占禁止法には無関係ですので、この記載は間違いです(ケアレスミスと思われます)。
2)35ページに、「中国では、日本政府が懸念するサーバーの製造は行っていない」と書きましたが、これは筆者の間違いです。実際は、IBMを買収した中国のレノボ・グループおよびファーウエイがサーバーの製造を行っています。特に、レノボ・グループは、サーバーの売上高シェアで、米ヒューレット・パッカード・エンタープライズ(25.7%)、米デル(17.5%)に次ぐ第3位の7.5%のシェアを占めています。しかし、もし、日本政府が中国製サーバーを「危険」と考えるなら、買わなければ良いだけのことです。

  
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