西山隆行が読み解くアメリカ社会

2018年9月28日

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西山隆行 (にしやま・たかゆき)

成蹊大学法学部教授

東京大学大学院法学政治学研究科博士課程修了、博士(法学)。甲南大学法学部教授を経て現職。専門は比較政治・アメリカ政治。著書に『アメリカ型福祉国家と都市政治』(東京大学出版会)、『移民大国アメリカ』(筑摩書房)、『アメリカ政治』(三修社)、『アメリカ政治入門』(東京大学出版会)、5月に『アメリカ政治講義』(筑摩書房)が刊行予定。

オバマに寄せられる困難な期待

 このように、退職した大統領は、現役の大統領を批判しない、選挙戦に関与しないという不文律を破ってまでオバマが選挙戦に関与しているのは、民主党の顔が存在しないこと、穏健派とリベラル派の間をつなぐことのできる人物であることが大きな要因である。それに加えて、ひょっとすると、オバマにはリベラル派を現実主義的な方向に向かわせる役割が期待されている可能性もあるかもしれない。

 近年のアメリカでは、トランプを嫌っている層がある程度存在するため、トランプを批判していれば一定の支持を得ることができる。また、トランプに加えてカバノーの性的スキャンダルなどもあり、現実主義的な政策スタンスを示すというよりは道義的な正しさを主張するだけで民主党支持層を固めることができる。2016年大統領選挙におけるサンダース旋風の余韻もあり、現在民主党内では穏健派よりもリベラル派の方が声が大きくなっている。今年の中間選挙でも、リベラル派の新人候補が穏健派の現職候補を予備選挙で破る事例があるなど、リベラル派の存在感が大きくなっている。

 一般に穏健派よりもリベラル派の方が選挙の際の動員力が高いこともあり、このような状況は、今年の中間選挙を考えれば民主党にとってプラスになるだろう。アメリカでは中間選挙の投票率が50%に達することはなく、また、特に下院議員選挙では比較的同質性の高い有権者をターゲットに選挙戦を展開すれば勝利できるため、候補者がある程度際立った性格を持つことは当選に寄与するためである。

 だが、リベラル派が活性化することは、2020年大統領選挙のことを考えれば民主党にプラスになるとは限らない。投票率が高くなる大統領選挙では、民主党の中核的支持者を固めるだけではなく、無党派層の支持も勝ち取らなければならないからである。今年2月の同コラムの原稿「米政府閉鎖再び、民主党の活性化はトランプの思うつぼ?」(http://wedge.ismedia.jp/articles/-/11916)でも指摘したように、民主党リベラル派の活性化は、再選を目指すトランプの思うつぼである可能性もある。リベラル派の情熱を維持しつつも、それがあまりに過激な方向に行きすぎるのを防いで現実主義的な行動をとらせること。ひょっとすると、オバマ大統領にはこのような困難な期待が寄せられているのかもしれない。

  
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