3月29日の英国のEUからの離脱、いわゆるBrexitを控え、欧州問題を考えてみたい。EUは、現在、Brexit以外にも様々な問題に直面していることは、ご存知の通りである。EU諸国がそれらの諸問題を解決し、新たな未来を開いて行くことができるのか。欧州の将来に関しては、悲観論と楽観論が混在する。
悲観的な見通しについては、例えば、2月18日付のウォールストリート・ジャーナル紙に掲載された米国バード大学のウォルター・ラッセル・ミード教授の論説がある。彼は、「EUは、1991年の旧ソ連のように崩壊する」と警告するジョージ・ソロスの指摘を引用している。しかし、この予告は、悲観的に過ぎると思われる。
EUが掲げてきた理想はすでに実現不可能になった、EUは失敗したプロジェクトであるなどと断言するのは、時期尚早であると思われる。
人間が作った社会制度は、作った後は、壊すのもなかなか大変である。だから、崩壊もなかなかしないと見た方が良い。当初の目標が実現されなくなっても、なんとか続いていく例が多い。
ましてEUは、既にその創設時にから拡大・深化し、巨大な官僚組織であるEU委員会、EU本部、EU議会、EU司法裁判所等を有す。これらに従事するヨーロッパ人は多く、EUの理念以上に、これらの組織を破壊する方が、ほぼ無理である。
英国に関しては、EUから離脱するということで、メイ首相は頑張っているが、離脱協定は議会で通らず、合意なき離脱の経済的コストが明らかになる中、英国の離脱の行方も不透明になっている。2016年のBrexit派が勝利してから、この3月29日にBrexitの期限が来るが、英国とEUとの離脱交渉は、結局、民主主義の源の英国議会で否決され、合意なきまま、離脱延期がなされるだろう。英国の国境管理は既に始まっているが、EU諸国内の雇用は、3月29日以降もそのままの形態で継続することが決まっている。国民投票のやり直しの話も出ては消え、消えては出てくる。
イタリアのポピュリスト政権も、EU離脱をほのめかしているが、英国の苦労を見て、躊躇するのではないか。何よりも、EUとの交渉の難しさよりも、経済的マイナス効果は、イタリアにとって、英国以上に受け入れられない状況であろう。イタリアの憂鬱は、頻繁にイタリアの沿岸にやってくる大勢の移民問題であり、イタリアが求めるように、EU全体でもっと負担をしてあげれば、その不満は緩和されるかもしれない。
ハンガリーやポーランドの非民主主義的な対応は、EUの基本的理念に反するものであるが、だからと言って、EUがこれら諸国を追い出すことはないし、両国とも、EU加盟で得たものは多く、自らEUを離脱することはないであろう。英国には、EU内のこれら東欧諸国の「移民」が英国人の職を奪ってしまうのでBrexitに賛成だと言う人もいる。一方、英国人がやりたがらない職を、これら移民が支えていると言う人もいる。例えば、ハンガリーの問題は、多くのハンガリー人が他のEU諸国に移り住んでしまうという問題がある。それに対して、最近、ハンガリー政府は、人口減少を懸念して、出産・子育て支援政策を打ち出した。