方程式で教えることによる「二重のマイナス」
なぜそこまで教えたがるのか?
私には子どもの前で“デキルお父さん”をアピールしたいだけのように見えます。そんなお父さんの口癖は、「何でこんな問題がわからないんだ!」「いつまでかかっているんだ!」です。その吐き出された言葉を受けとった子どもは、「オレはすぐにわかるのに」「オレだったらすぐに解いてしまうのに」という発声されなかった父親の気持ちを感じとります。
安易に方程式を教えることは、解き方に混乱をきたすとともに、お父さんに嫌悪感を抱くという“二重のマイナス”を引き起こすようになります。
子どもに算数を教えようと思ったら
算数を教えようと思ったお父さんにお願いしたいことが2つあります。一つ目は、麻布中学と武蔵中学の入試問題を解くことです。両校ともに算数の王道を行く問題です。入試問題を解きながら、算数と数学の違いを感じとってほしいと思います。
二つ目は、多くの企業で就職試験に採用されているSPI試験の「非言語テスト」をながめて、このような問題が解ける学生を企業が求めていることに思いを馳せてほしいのです。このテスト問題の多くが算数です。算数的な思考と手法を使えば瞬時に解けるのに、数学的な手法を使って解くと制限時間内では終わらない問題が並んでいます。
この2つを解いてみてから、子どもが使っている塾のテキストを見ていただくと、そのテキストの解説が大切であることをわかっていただけると思います。
子どもに自由時間を一切与えない「エクセル父さん」
朝6時、計算ドリル30分、5分休憩して6時35分から漢字ドリル20分、5分休憩して7時から・・・・・・。
1日のスケジュールを5分刻みにエクセルに入力し、スケジュール通りにやらせようとするお父さんがいます。私たち家庭教師の間では、密かに「エクセル父さん」と呼んでいますが、このタイプのお父さんも子どもの足を引っ張ります。
「努力をすれば、結果が出る」
「たくさん勉強をすれば、成績は必ず上がる」
エクセル父さんの口癖です。こういうお父さんは、大学受験で必死になって勉強して第一志望校に合格したとか、仕事でも結果を出してきた人が多いのが特徴です。自分で高い目標を立て、頑張って結果を出した。そういう成功体験があるから、わが子も同じことができるはずだと思い込んでいます。
しかし、そうできたのは大人の頭脳と精神力があったからに過ぎません。同じことをわずか11歳、12歳の子どもができると思ったら大間違いです。子どもの体調や精神状態を無視したスケジュールを一方的に立て、できていないことばかりを指摘されていては、子どものモチベーションは下がる一方です。
第一、明らかに予定を詰め込み過ぎています。こういうタイプのお父さんは“ヌケ”が許せず、4教科まんべんなく勉強をさせようとします。しかし、夏休みは40日あっても受験生はほぼ毎日塾の講習があり、その復習と宿題で多くの時間を割くことになり、残された時間はそれほど多くはありません。そこで、優先順位をつけて勉強を進めていくことが、この夏の成功のカギを握ります。つまり、4教科まんべんなく勉強することよりも、どの教科のどの単元をやるか絞り込むことが大事なのです。
では、何を選択すればいいのか?
一番結果につながりやすいものをチョイスしましょう。得意なものを伸ばし、もう少し頑張れば伸びそうなものに取り組むのです。
人生経験が浅い子どもは今がすべてで、遠い先の未来を予測して頑張ることが苦手です。親御さんからすれば、入試本番まであと半年しかないと思いがあり、あれもこれもやらせたくなりますが、子どもにとって半年はとてつもなく先のことで、そこに向かってがんばり続けることはできません。ですから、大きな目標に向かって頑張らせるよりも、小さな成功体験を積み重ねて自信を持たせてあげることが大事なのです。
誤解をしないでいただきたいのですが、親御さんが学習スケジュールを立てること自体は悪くはありません。でも、やれなかったことだけをチェックして、子どもを叱ることはやめましょう。遊びたい盛りの子どもが毎日塾に行って勉強をしている。それだけでも十分頑張っていると思います。そんなお子さんの頑張りを労い、少しでも成長が見られたら大いに誉める。そうやって気持ち良く勉強をさせてあげることがうまくいく秘訣です。