ロシアと中国の奇妙な共存関係
ロシアの中国観についてもう少し言及しておこう。
一方においては、中国はロシアのパートナーと位置付けられる。衰退が止まらない極東部の振興を図る意味でも、経済制裁と原油安で苦しむ経済を立て直す意味でも、中国はもはやなくてはならない存在となっているためだ。すでに中国はドイツやオランダを凌(しの)ぐロシア最大の貿易相手国の地位を占め、昨年は中露の貿易高が初めて1000億ドルを突破した。また、欧米の制裁がロシアの基幹産業であるエネルギーを狙い撃ちにする中、中国はロシアのエネルギープロジェクトに資金を出してくれる貴重なパートナーでもある。
他方、中国の人口はロシアの10倍、GDPは8倍、兵力でも2倍の差をつけており、もはや国力の差はあまりにも大きい。西側から孤立する中でロシアが中国との関係を深めようとしても、それは対等な関係たりえず、ジュニア・パートナー(格下のパートナー)としてしか扱われないだろう。政治や経済の面でも中ロは様々な軋轢(あつれき)を抱えているし、「狭間の国々」をはじめとする旧ソ連諸国に中国が進出してくることにもロシアは警戒的だ。
ただ、それでもロシアは当面、中国との良好な関係を維持する姿勢を示している。仮に中国と決別して西側に接近しても、今度は西側のジュニア・パートナー扱いされるだけだ、冷戦後の30年間がそうだったではないか、というのがロシア側の言い分であろう。しかも中国はロシアが旧ソ連諸国を勢力圏として扱うことに異を唱えず、ロシアや旧ソ連諸国に対して米国のような民主化要求(ロシアはこれを「西側」の内政干渉であるとして強く反発してきた)を突きつけることもない。
中ロが共通の利益で結ばれた緊密な同盟になることもまた見通しにくいとしても、このユーラシアの二大国は当面、奇妙な共存関係を続けていくのではないだろうか。
■ポスト冷戦の世界史 激動の国際情勢を見通す
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インタビュー ビル・エモット氏 (英『エコノミスト』元編集長)
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