一方で、そこを第一志望として受験し、入学してくる子もいます。そういう子は、自分の行きたい学校に合格できたという喜びが学習意欲を高めます。入学時点での学力差は、学習意欲を持って努力を続ければ、1年もすればなくなります。それがまた学習意欲を高めるという好循環を生みます。
中学受験は子どもがまだ幼いため、子どもの成熟度や当日のメンタルなど様々な要素が組み合わさって合否が決まります。絶対に受かると思っていた学校が不合格になってしまうとショックですが、結果は結果とまずは現実を認め、「合格できなかったことは残念だったけれど、お前の未来はこれで決まってしまうわけではない。本当に大事なのはこれからだよ」と声をかけてあげましょう。それを伝えられるのは、現実社会をよく知るお父さんだからこそできることだと思います。
補欠、全落ちは長い目で見れば逆転のチャンス
中学受験では、補欠合格で進学する子もいます。多くの学校では、2月初めに入学者が決まり、10日か11日ごろに入学説明会や制服採寸があります。この頃には入学の意志が固まっていると思いますが、中にはそれ以降に補欠合格の知らせを受けることがあります。補欠合格というと、合格レベルに達していなかったと思ってしまいがちですが、多くの子はボーダーラインで合格しています。その差はわずか1〜2点。ですから、補欠合格で進学したからといって、下を向く必要はありません。むしろ、補欠合格をして進学した子は、自分はギリギリで合格したと自覚しているので、入学後も努力を忘れずに勉強に励みます。その結果、大学受験で第一志望校の難関大学に進学する子がたくさんいます。
また、受験した学校がすべて不合格で、地元の中学に通う子もいます。多くの家庭では、全落ちを避けるために、受験校は偏差値の幅を広く持つようにしていますが、中には「○○中か○○中に合格できなければ、地元の中学でもいい」と決めている家庭もあります。このように家庭の方針がはっきりしていればいいのですが、それでも全落ちをすると子どもは少なからずショックを受けます。中には勉強に対するやる気が失せ、無気力になってしまうこともあります。
結果は結果として受け止め、まずはこれまでの努力を認め、労ってあげてください。その上で、高校受験でリベンジできるように気持ちを高めてあげましょう。中学受験では満点を取って合格する子はほとんどいません。6~7割できていれば、合格できます。しかし、高校受験で公立トップ校を狙うのであれば、100点を目指さなければいけません。中学受験の勉強をしてきた子にとっては、公立中学1年生の勉強は簡単に感じるでしょう。しかし、やさしい内容でも丁寧に取り組む意識をさせましょう。例えば中学受験の算数なら途中式を書かなくても答えを出せることがあります。でも、数学はきちんと式を書き、論理的に説明することが求められます。それを面倒くさがらず、一つひとつ丁寧に取り組むクセをつけると、高校受験でよい結果を出すことができます。実際、私の教え子でも、高校受験や大学受験でリベンジを果たした子はたくさんいます。
春休みは中学生活を好スタート切るための準備期間
中学受験が終わったら、結果はどうであれ、まずは思いっきり遊ばせてあげましょう。でも、2週間もすると、遊ぶだけの生活にも飽きてきます。そのタイミングで、中学で好スタートを切れるよう準備を始めましょう。といっても、ガツガツ勉強をする必要はありません。数学なら中1の教科書の半分くらいに目を通しておきます。中学受験をしてきた子であれば、それほど難しい内容ではありませんが、「なぜそうなるのか」を意識して理解するようにします。
英語は中学からスタートする教科です。最初の一歩が大事になりますので、今のうちに英語に慣れておきしょう。NHKの基礎英語講座は4月からスタートしますが、それを待たずにバックナンバーのCDを購入し進めておくのです。そうやってほんの少し先へ進んでおくと、アドバンテージになります。
中学生になると、これまで以上にまわりと自分を比べるようになり、中1最初の定期テストの成績が悪いと自己肯定感が下がってしまいがちです。自己肯定感は学習意欲に直結してきます。スタート時点から気持ちを改めて、努力を惜しまず上を目指す。そこでよい結果を出すことができれば、「俺はこの学校でこのくらいのレベルなんだな」と自己認識し、「よし、この調子でがんばるぞ!」とやる気を維持していくことができます。そのためにも、中学受験が終わったら一度気持ちをリセットさせ、「今までよくがんばってきたな。でも、中学受験はゴールではないぞ。いいか、勉強が本当に楽しくなるのはこれからなんだぞ!」と学ぶ楽しさを教えてあげてください。
(構成=石渡真由美)
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