世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2020年3月3日

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 米国は欧州各国に5Gにファーウェイの製品を使わないよう繰り返し強く警告してきた。1月中旬に米側は英政府に対して「ファーウェイの5Gシステム導入は狂気の沙汰」とまで言った。しかし、米国は主要な同盟国がファーウェイを使うのを阻止するという米国の動きは失敗している。1月28日、英政府は、5Gへのファーウェイの参加を、厳格な監視の下であるとはいえ、限定的に容認した。さらに、2月14-16日に開催されたミュンヘン安全保障会議でポンペオ国務長官とエスパー国防長官が繰り返し警告したにもかかわらず、ドイツも英国に倣うようである。

Anadolu Agency / Anadolu Agency

 ファーウェイをめぐる米欧対立の一つの大きな原因は、低価格で機器を提供するファーウェイの代替がないことである。現在ファーウェイの競争者はノキアとエリクソンだが、両社ともファーウェイの低価格と研究開発での競争で苦闘している。ミュンヘン安保会議でのエスパー国防長官の警告に対し、聴衆は懐疑的であったし、エストニアのトーマス・イルヴェス元大統領は「米国は代替案を提示しているのか、ノキアとエリクソンに補助金を出すのか、ファーウェイを使う代わりに何をしろというのか」と述べた。

 もう一つの大きな要因は、ファーウェイが欧州に電気通信機器を提供してきた過去20年間にファーウェイが機微な情報を得たというはっきりした情報を米国が持っていないことである。もっとも、米国が危惧しているのは5Gという最先端の技術に関するもので最新の話であるが、それでもリスクは想定の話で実際に機密が漏洩したという情報はない。

 なお、ドイツについては、そのほかに中国との貿易上の利害がある。中国はドイツがファーウェイを使わなければドイツ車の輸入を制限すると脅しているようである。メルケル首相がこの中国の経済的報復を懸念したのが、ドイツがファーウェイを受け入れた理由の一つであることは想像に難くない。

 問題の根本の三つ目は、5Gという次世代の中心的技術で米国が中国に出遅れていることである。米国にファーウェイに匹敵する技術があれば、欧州の同盟国は米国の技術を導入した可能性が高い。米国が同盟国にファーウェイの使用禁止を要請しているのは、重要な情報の流出を懸念しているほかに、米国がファーウェイに対抗する技術を提供できないという事情もあると思われる。

 米国では遅まきながらファーウェイに対抗する技術の開発の動きがあるようである。主要な無線会社のグループが5Gのネットワークのソフトウェアとハードウェアのシステムの共通化を進めている。それはファーウェイより小さな会社が相互に作用するネットワークの設備の個々の部品を作り、ファーウェイの市場独占を打ち破ろうとするものである。これについての技術の詳細は分からないが、賛否両論があり、どこまでファーウェイの市場独占を打ち破れるのか明らかでない。

 いずれにせよ、ファーウェイをめぐる戦いで、多くの欧州諸国は、米国の警告を聞かずに同盟を危険にさらすか、重要な貿易相手国の中国を疎遠にするかを選択する苦しい立場に立たされ続けるのではないかと思われる。

  
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