再び「クラフト」と称する選択肢は
「ホップでビール選んでもらう、という形を広げていきたい。まず、ソラチエースをフラッグシップにしながらです」と新井。
ソラチ1984は、ペレットホップを使用している。ペレットホップはホップを乾燥、粉砕して練り込み粒状に固めて成型する。均質で輸送にも便利な一方、固める際に熱が発生して本来の風味がどうしても変化してしまう。
サッポロは北海道限定発売の「サッポロクラシック・富良野VINTAGE」に、収穫したばかりの生ホップを使っている。つまり、ペレットにしないホップを醸造に使う技術をもっている。
ホップを基点とした、かなり個性的なビールの開発と少量生産は可能なはず。静岡工場には、試醸用のパイロットプラント(小規模醸造設備)があり、商品化のリスクは少ない。すでに、空知産ホップなどを使うビールも数量限定で時折ネットで販売もしている。
ちなみに、ホップはアサ科の宿根性多年生植物だ。つる性であり8メートル程度に成長し、8月から9月にかけて収穫される。
ビールには受粉前の雌株がもつ毬花(きゅうか)と呼ばれる花が使用される。毬花に含まれる黄金色の粉「ルプリン」が、独特の香りや爽やかな苦味(くみ)、泡立ちをビールにもたらす。さらに、雑菌の繁殖を抑えたり、過剰なタンパク質を沈殿させてビールの濁りを取り除く働きもする。
黒ラベルのような大量生産するビールに使うホップは、同じ種類でまとまった量を確保しなければならない(複数のホップを使うメガブランドもある)。これに対し、少量生産のクラフトビールなら、世にあまり出ていない希少なホップを使うこともできる。むしろホップでビールを差別化できるのだ。
サッポロは15年にクラフトビール参入を謳ったものの、市場からの批判を浴びて「クラフトビール」の看板を下ろしてしまった。だが、「クラフトビール」と再びネオンサインを点すのも選択ではないか。コアなファンがいる一方、若者など新規にクラフトに入ってくるユーザーもいる。何より、ホップや大麦と原材料まで本格的に研究しているのは大手を含めても、世界でサッポロぐらいだから。