世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2020年4月21日

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 エイブラムス駐韓米軍司令官は4月1日、在韓米軍基地で働く韓国人9000人の内、半数を無期限休職にすると発表した。今月以降、彼らは無給で自宅に留まることになる。

Im Yeongsik/iStock / Getty Images Plus

 こうした事態となったのは、在韓米軍駐留経費について、昨年末に米韓間の特別措置協定が失効したためである。在韓米軍部隊に警備や生活面の種々のサービスを提供する韓国人スタッフの賃金は同協定の取り決めによるが、その期限が切れてから3か月経った今、それを補填する非常用予備資金も底をつき始めている。この結果、在韓米軍基地で働く韓国人に支払うお金が無くなり、エイブラムス駐韓米軍司令官は基地で働く韓国人の約半数を無給休職にしたのである。米韓が新たな分担について合意するまで韓国労働者の無給休職状態は続くだろう。新協定を目指す米韓交渉は米側が現在の韓国側の負担額の約5倍という負担額を求め、難航している。

 米国が米韓同盟の意味をどうとらえているのか、韓国が米側要求に応じなければどうするのか、米軍基地の機能維持のために韓国人労務者は今ほどの規模で必要なのかなど多くの問題を考える必要がある。しかし、4月4日付けのエコノミスト誌の記事‘South Koreans at US military bases are furloughed’によれば、歴代の米大統領は米韓同盟を世界と米国のためのアジアの平和維持という米国の大戦略に不可欠な要素と見ていたが、トランプは同盟を戦略的必要ではなく、外国に与える高価な好意のように思っており、そのため、米軍駐留費用に関する米韓交渉は緊張をはらんだ毎年の儀式となっている。そうであるとすれば、この交渉は、なかなか妥結しないことになる恐れがある。

 韓国は4月15日に総選挙をするが、選挙後、お互いが柔軟性を発揮して、交渉妥結を図ることが望ましい。選挙結果いかんによっては交渉が難しくなるかもしれない。しかし、韓国の基地労務者が無給休職になることが在韓米軍の機能を著しく阻害するとは必ずしも言えないと思われる。

 在日米軍については、いわゆる思いやり予算の根拠になっている日米特別協定は来年3月まで有効である。日本に対しても、韓国に対するのと同じような要求が行われる恐れがあるが、日米協定が失効する前に、米大統領選挙がある。トランプが再選しなければ、今回の要求はトランプの同盟軽視などの考え方からきているところが大きいので、要求自体がなくなる可能性がある。したがって大統領選挙の結果をまずは見極めるということであろう。

 トランプ再選になった場合に日本にも韓国に対すると同様の極端な負担増の要求があれば、これは拒否すればよい。在日米軍を防護しているのは自衛隊であり、米軍の作戦経費はそれで相殺される(米は韓国にグアムからの戦闘機派遣費用の分担も求めたとされている)といえるのではないか。また米国からの武器購入増加、あるいは米軍作戦への発言権なども取引材料にはなるだろう。同盟国として、米国の予算ひっ迫状況にも配慮しつつ真摯に話し合えばよいと思われる。先行する米韓交渉の結果も参考になるだろう。米軍基地にはその機能を害せずに、整理できる日本人従業員もいるように思われる。

  
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