Wedge REPORT

2020年5月10日

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 コロナウイルスへの不安から3月に起きたコメ買い占め。外食や給食向けといった業務用の需要が急減し、コメ相場が下がる中での合理性を欠く消費行動だった。その原因と、デメリット、コメ確保への不安の解消方法を紹介したい。

(ake1150sb/gettyimages)

急な需要に追い付かなかっただけ

 スーパーのコメ売り場が空っぽなのを目撃した方は多いと思う。コメが買えなくなるとパニックになった人は少なくなかったようだ。実際は、農水省や関係機関が喧伝している通り、コメ不足はない。スーパーからコメが消えたのは、急な需要に精米が追い付かなかったのと、家庭向けの袋が不足したからに過ぎない。

 買い占めされたコメが置かれている劣悪な環境を思うと、心が痛む。台所の隅に打ち捨てられ、忘れられてはいないか。直射日光が当たったり、水をかぶっていたり、においの強いものの横に置かれていたりと、言語道断な扱いを受けてはいないか……。買い占めてしまった方、至急コメの状態を確認し、冷暗所に隔離してください。

米屋を忘れた日本人

 コメが不足していると誤解されたのは、多くの人がコメをスーパーやドラッグストアなどで買おうとしたからだろう。在庫を潤沢に持つ米穀店を訪れ、店員と話せば、そんな心配はないとすぐ分かったはずだ。米穀店の多くは、店頭での家庭向けの販売より、飲食店や施設の給食向けの業務用の取扱量が多い。注文の単位が大きい業務用の需要が減って、経営に窮しているところが少なくないのだ。家庭用の需要が多少増えても、品薄にはならない。

 独自の仕入れルートを持っていたり、大きい貯蔵庫を備えていたりするので、たとえ米穀卸からの供給がストップしても、店頭でコメを販売できる店が多いのだ。餅は餅屋と言うけれど、コメは米屋なのだ。こんな常識を多くの消費者が忘れ果て、右往左往したのが今回の騒ぎである。

精白した途端に劣化が始まる

 騒ぎは、主食であるコメへの一般消費者の無理解が生んだと感じる。買い占めは、デメリットばかりだ。コメは生鮮食品だから、精白した途端に劣化が始まる。家庭で精白したコメを消費するなら、精米日が直近のものを少量買い、においが移らないように密閉して湿気のない冷暗所で保管し、なるべく早く食べきる方がいい。基本的なことなので、ご存じの方は多いだろう。

 買い占めは、劣悪な環境で貯蔵され、まずくなってから消費されるコメにも、生産した農家にも失礼なことだ。もみがついた状態のコメを買い占めて、もみすりができるコイン精米機で精白して食べる方法もあるかもしれない。しかし、品質を気にする農家や米穀卸は、コメを低温貯蔵庫で保管する。家庭での常温の貯蔵は、理想的ではない。

 主食の確保にどうしても不安を覚えるなら、いざというときコメを送ってもらえる農家の知り合いを作ればいい。その実、国内のコメ消費に占める縁故米は1割近くもあるとされる。多くの人が親類縁者をたどれば農家に行きつくはずだ。棚田のオーナー制度に参加し、出資金と引き換えにオーナーになって、定期的にコメを送ってもらうこともできる。コメ農家が催す消費者向けイベントは全国でさまざまなものがある。方法はいくらでもあるのだ。

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