Wedge REPORT

2020年8月6日

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 18歳人口が年々減少する中、定員を満たすだけの学生を確保できず、経営難に苦しむ大学が増えている。とりわけ私立大学はその割合が高い。日本私立学校振興・共済事業団の資料によると、約3割の大学が定員割れになっている。同様に、約4割の大学法人が赤字に陥っている。

 近年では私立大学が、地元自治体が運営する公立大学に移行する事例が増えており、過去10年ほどの間に11の私立大学が公立化した。

 自治体が公立大学を運営する場合、学生数に応じて地方交付税が増額され、自治体はその交付税から大学に運営費交付金を支給する。私立大学の時と比べて補助が大幅に増加するため、それを利用して授業料を引き下げることができることに加え、「公立大学」というブランドもあり学生を呼び込みやすくなるとのメリットもある。

 塾業界の関係者は、「公立という看板のもたらす効果は大きい。学費が安くなるだけでなく、自治体が管轄しているという安心感や、安定して高いレベルの教育を受けられる期待などから、受験生やその親からの信頼が厚くなる。結果、その地域だけでなく、近隣の自治体の受験生にとっても選択肢のひとつとなる」という。実際、公立化した大学の入試志願倍率の推移を見ると、公立化した年は前年と比較し軒並み高くなっている(下表)。

(出所)文部科学省資料よりウェッジ作成 写真を拡大

 経営難に陥る私立大学の公立化は、果たして解決策になるのだろうか。最前線の現場を歩いた。

市議会、自治体間で揉める
旭川大学の公立化議論

 旭川空港から北に車を走らせること約30分、長閑な風景が広がる街の中に旭川大学の看板が目に入ってきた。経済学部と保健福祉学部を持つ定員約800人の同大学は、大学全体でみると定員割れが続いており、年度の収支も赤字傾向となっている。そうした状況の中、13年に市に公立化を要請した。

公立化を目指す旭川大学。経済学部と保健福祉学部を持つが、70キロ離れた名寄市にも保健福祉学部を持つ名寄市立大があり、地域内の学部重複に懸念の声も多い (WEDGE)

 学長の山内亮史氏は「志を持った若く優秀な教員を集め、大学の魅力を高めたいが、今の状況では十分な研究予算を確保することもできず、教員の呼び込みが難しい。また、〝偏差値至上主義〟ともいえるような昨今の受験状況において、大学の特徴、中身だけで高校生にアピールするのは限界がある。公立化するしか道がない」と危機感をあらわにする。公立化に際してはデザインを学ぶ新たな学部の設置も計画し、定員の中には地元学生対象の地域枠も他の大学より高い水準で設定するという。

 地元経済が疲弊する中、経済界も旭川大の公立化には前のめりの姿勢だ。2014年に東海大学が旭川キャンパスを撤退して以降、若者流出への危機感が強まっていた。

 旭川信用金庫理事長で旭川商工会議所副会頭の原田直彦氏は、「旭川大がなくなると、経済界としては人手不足がかなり深刻になる。公立化して授業料が下がれば若者が地元に残ってくれる可能性が高くなる。補助金をもらってもなおずるずると赤字経営が続くのであれば、交付税を原資とした十分な公費を投入し、公立大学というブランドもつけて一気に変革した方がいいのではないか」と公立化に期待を寄せる。

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