西側諸国の連携に必要な
日本のリーダーシップ
長期的に見れば、やはり対中関与政策は正しい。西側が中国に負けることはないからだ。日米欧の経済規模は、依然として世界GNIの約半分を占める。いかに中国が台頭しても、西側を抜くことはあり得ない。軍事的にも、中国の拡張主義に直面する北東・東南アジアでの緊張はあるものの、西側の対中優位は動かない。何よりも、西側が掲げる自由と民主主義は、立ち枯れた共産主義と高揚するナショナリズムにしか正統性を求め得ない中国共産党には決して覆せない歴史の流れである。
日本は、アジアで最古の産業国家、民主主義国家である。戦後は、アジアの自由主義的な国際秩序構築に大きく貢献してきた。1985年のプラザ合意の後、日本の円は急伸し、製造業は日本を飛び出した。欧米、東南アジア、中国のみならず世界中に日本の直接投資が急増した。日本は輸出国から投資国へ変貌した。21世紀に入り、日本がリードしてCPTPPや日EU・EPAなどのメガ自由貿易圏を創出した。世界経済を一つの自由貿易システムとして日本経済に組み込んだのである。90年代から多くのアジアの国々が市場経済化に舵を切り、そして、その多くが次々と誇り高く民主化していった。自由で開かれたインド太平洋地域が姿を現しつつある。それは日本の国家戦略が描いてきたアジアの姿であった。
唯一の例外は中国である。中国国民がようやく経済成長の果実をかじることができ始めたにもかかわらず、中国共産党は、昭和前期の日本のように、国民のナショナリズムを鼓舞し、厳しい統制社会を実現し、軍事力を誇示して拡張主義に入りつつある。豊かな生活の中で徐々に政治的に覚醒しつつある13億の中国国民を治めるには、もはや、それしか方法がないのであろう。この中国を外から変えることは難しい。しかし、西側が自由社会の魅力を失わない限り、中国が内から変わることはあり得る。それにはとても長い時間を要するであろう。
西側がまとまれば、中国に負けることはない。しかし、欧米文明圏の国々の中に、真に中国を知る国は少ない。中国と1500年の交流の歴史を持つ一衣帯水の日本は、米国と共に西側諸国のリーダーシップを取って、中国が戦前の日本のように道を誤ることのないように、アジアを支えていく責任がある。国としての政治的な知恵が問われているのである。
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■宇宙が戦場になる日
PART 01 月は尖閣、火星はスカボロー礁 国際宇宙秩序狙う中国の野望
PART 02 遠のく米中の背中 ロシアの生き残り戦略
CHRONOLOGY 新たな文明を切り拓くカギ 各国の宇宙開発競争の歴史と未来
PART 03 盛り上がる宇宙ビジネス 日本企業はチャンスをつかめ
COLUMN 地上と同様、宇宙空間でも衛星を狙うサイバー攻撃
INTERVIEW 「宇宙」を知ることで「地球」を知る 山崎直子(宇宙飛行士)
PART 04 守るべき宇宙の平和 日本と米国はもっと協力できる
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