世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2020年9月2日

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 今年の初めから始まった米国の大統領選挙であるが、新型コロナウィルスの感染拡大でそれどころではないという雰囲気も一時あったが、ここにきて、民主党の党大会がオンラインで開催され、正式にカマラ・ハリスが黒人女性初の副大統領候補に決定され、いよいよ11月の投開票に向け、大統領選挙の論戦が本格化することになった。論戦の主な議題は、経済、人種問題、新型コロナウィルス対策等、国内の諸問題に集中するだろうが、それでも、外交問題を無視するわけには行かない。二国間問題で最も注視されるのは、現在進行形の米中対立である。

Maksym Kapliuk / donfiore / Hendra Su / iStock / Getty Images Plus

 8月14日付のウォール・ストリート・ジャーナル紙は、社説で、米中の戦略的競争において、台湾が中心的課題であり、向こう4年以内に事態が緊張する可能性があるとして、両大統領候補に台湾への対応について具体的に説明することを求めている。

 米国の次期大統領が直面する最大の安全保障上の課題は、経済、技術、外交、軍事で米国の優位性を脅かすまでに台頭し、国際社会の秩序と制度を一方的に自国に有利な形で再構築しようと試みる、中国に対する政策である。この意味で、中国が英国との合意を無視する形で自由と民主主義を踏みにじってコントロール下に置こうとする香港を台湾の明日の姿になぞり、次期大統領候補に台湾への対応、換言すれば対中政策を明示するように、両大統領候補に迫る意味がある社説である。

 現在の米国は党派的対立、新型コロナウイルス感染、経済活動低迷、制度的人種差別など国内問題に明け暮れており、中長期的な戦略的思考を背景とした地政学的な国際問題への関心は低い。トランプ大統領が再選されれば、トランプ本人の利益を主眼とした「米国第一主義」が継続し、国際面ではレガシーを意識した「劇場型外交ショー」が主体になると思われる。バイデン候補が当選した場合には、激しく対立する米国民をまとめ、混乱する社会を再建し次世代の民主党政治家につなぐことが優先事項になると思われる。そもそも国際問題よりも国内問題を優先する姿勢はオバマ政権で明らかになっており、この社説が触れているようにバイデン候補が国際社会における米国の役割を積極的に推進した実績もない。

 中国に対する米国人の見方は悪化している。7月末のピューリサーチ調査では中国に否定的な見方をする米国人は73%に達した。オバマ政権で中国政策を担当した高官も、中国に対して融和的な姿勢を示したことが、中国から「米国の弱さ」と受け止められ、中国の武力誇示を伴う高圧的な地域政策の誘因になったと考えている。この社説でも触れられた国防長官候補のフロノイ元国防次官などは、地域における通常戦力の物量の視点からは中国が優位で、米国が非対称戦争を戦うことになると危機感を強めている。バイデン大統領候補とハリス副大統領候補が国内型の政治家である以上、大局的な視点から同盟国を重視して中国に対応しようとする、フロノイをはじめとした日本との親和性がある民主党系の人々との関係をこれまで以上に深める必要があろう。

  
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