今年のG20首脳会議は11月21、22日にサウジのリヤドで開催されることになっている。サウジの実質的な統治者である皇太子のムハンマド・ビン・サルマンはその会議の主宰者になるが、その会議の成功を強く望んでいる。しかし、サウジは、イエメンへの軍事介入における文民をターゲットとした攻撃、国内での反対派の弾圧などにより、国際的に「のけ者」となっている。
そして、2018年10月にサウジ人ジャーナリストのジャマール・カショギが殺害された事件がある。本件について、9月7日にリヤドの裁判所は、8人の容疑者に有罪判決を言い渡し、この事件に一つの区切りをつけた。これも、11月のG20首脳会議をにらんでのことであると思われる。ただ、言い渡された判決は透明性に欠け、かつ、この犯罪の首謀者を無罪にするもので、国際社会を納得させるものではない。
9月9日付けのワシントン・ポスト紙社説‘The Khashoggi verdict is meant to provide a fig leaf. Democratic leaders shouldn’t take it.’は、「リヤドの裁判所の判決は全く透明性を欠いている。有罪とされた人の氏名は報道されておらず、彼らの犯罪の詳細は述べられていない」と述べ、国連の報告者アグネス・カマードが判決について、「法的或いは道徳的正統性をもたない」「正義のパロディ」である、なぜならばこの処刑を組織し行った高官は「最初から自由に歩き回っているからである」とツイートしたことを紹介している。社説は、サウジの判決をメルケル、マクロン、ジョンソンなどが受け入れるべきでない、と論じているが、当然彼らは受け入れないだろう。トルコのエルドアンもG20に参加するが、トルコも、当然サウジの裁判所の判決を受け入れないだろう。したがってカショギ事件についてのサウジへの追及は今後も続くし、またそうあるべきであると思われる。
G20は世界の金融経済問題を扱うフォーラムであり、世界経済で主要な役割を果たす国々が参加している。たまたま今年の開催場所がリヤドということであるが、それだからといって参加を躊躇する理由はない。
世界経済についても、金融についても、コロナで大きな打撃を受けており、これからの対応についてG20で話し合うべきことは多い。カッショギと世界金融・経済問題は分けて対応するのが正解と思われる。政治的な問題はプーチンのナヴァルヌイ問題、習近平のウイグル問題や香港問題、エルドアンの東地中海問題などなど枚挙にいとまがない。諸問題の関連を考えることも時には重要であるが、諸問題を分けて考える方が実り多い結果につながると思われる。
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