そもそも中国人はなぜ、尖閣諸島を自らの領土と称するのか。「領土」だと言い出したのは、いかにさかのぼっても昭和40年代、周辺海域に石油資源の埋蔵などが確認されてからであって、要するに利害関心としては、それしきの動機にすぎない。ところがいったん言い出すと、以後そう信じて疑わなくなった。そのほうが実は重大であって、経済的な利害関心などとは別次元の、かつ尖閣にとどまらない話になってくる。たとえば、中国がベトナムやフィリピンなどと激しく対立している南沙諸島と変わるところはない。
最近の動きは、あたかもそんな事情を切実に教えてくれそうなので、ややつぶさにみてゆこう。
尖閣のみならず沖縄に関しても主張
尖閣をめぐる日本の「挑発」に強く反撥した中国では、尖閣諸島のみならず、沖縄そのものが日本のものではない、歴史的な経緯からして、中国の支配下にあるべきだ、という声があがりはじめている。
その根拠は、現在の沖縄県がもともと、15世紀に成立し19世紀後半まで存続した琉球王国だった、という事実にある。その琉球国王は明朝・清朝の皇帝へ定期的に使節を派遣し、貢ぎ物をおくり、臣礼をとっていた。これは別に琉球に限ったことではなく、朝鮮やベトナムも同じで、こうした国々のことを、中国の漢語で「属国」といったり「藩属」といったりする。中国に「属」しているのだから、歴史上その主権は中国のものであり、日本の琉球支配には正統性がない、という論理なのである。
この論理はつい最近も表明され、マスコミをにぎわす話題となった。日本のウェブの報道をそのまま引こう。産経新聞7月14日配信の記事である。
「沖縄・尖閣諸島(中国名・釣魚島)の領有権問題に絡み、中国国防大学戦略研究所所長の金一南少将が『沖縄は中国の属国だった』との“暴論”を展開していたことが13日までに明らかになった。現役軍高官の発言だけに、波紋を呼びそうだ。――」
金一南氏のいわゆる“暴論”の中国語原文は、以下のURLに見える。中広網7月12日配信の記事。
http://mil.cnr.cn/jmhdd/ywj/201207/t20120712_510197013_2.html
さわりだけ訳して引くと、以下のようになる。