2022年8月17日(水)

WEDGE REPORT

2020年11月24日

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安井 至 (やすい・いたる)

東京大学名誉教授

東京大学名誉教授。専門は環境科学、無機材料化学。1945年東京生まれ。東京大学大学院工学系研究科博士課程修了後、同生産技術研究所で講師等を歴任し、教授に。58歳で辞職。国連大学副学長、独立行政法人製品評価技術基盤機構理事長等を歴任。
 

 現時点の地球温暖化の影響を一言で言えば、それに伴う異常気象や気候災害が、日本においても年々ひどくなっているということだ。その原因は、海面温度の上昇にあるように見える。台風は、海面水温が約27℃を超す条件で発達するが、太平洋の台風が発生する領域では、水温が30℃を超すことも今では普通になってしまった。

2019年10月、台風19号が関東地方に上陸した影響によって広範囲で大雨となり、長野県の千曲川や、福島県の阿武隈川、東京都の多摩川などで氾濫が発生した。その結果、19年の水害被害額(津波を除く)は統計開始以来、最大の約2兆1500億円となった。 (KYODO NEWS/GETTYIMAGES)
2020年7月3日から31日にかけ、日本付近に停滞した前線の影響により、各地で大雨となり、人的・物的被害が発生。特に九州 では24時間降水量が480ミリを超える地点があるなど記録的な大雨となり、4日には熊本県の球磨川が氾濫して浸水被害が発生した。 (THE MAINICHI NEWSPAPERS/AFLO)

 台風以外の異常気象として、今年7月、九州・熊本を襲った豪雨も挙げられる。線状降水帯が発生し、狭い地域に継続的に大雨が降り、洪水となった。線状降水帯の発生には、ある条件が必要である。それは、24℃程度以下の海水と、30℃程度以上の海水が接触していることである。九州での線状降水帯に関する低温の海水とは、中国の黄河が流れ込む黄海の海水であり、30℃の海水とは、太平洋の温水である。

 海面温度の上昇をもたらす現象は、当然大気温の上昇であり、その根本原因は大気中のCO2濃度の上昇である。気象庁のサイトには、綾里、南鳥島、与那国島における二酸化炭素濃度(ppm)が明確な上昇を示している図があり、1987年に350ppm程度だったが、2020年には415ppm程度まで上昇している。

 気候とは人間生活の基本であり、切っても切り離せない重要なものである。われわれは、年々深刻化する地球温暖化問題にどのように対応すべきなのだろうか。その解は非常に単純である。「CO2を発生しない社会生活に転換する」ということである。

 産業革命以来、人類が消費してきたエネルギー源は化石燃料である。その実体は、数百万年前の地球上の動植物が、地下に無酸素状態で埋没したことで生成された石炭、石油、天然ガスなどの炭化水素である。これらは、その組成からして、燃焼させれば、CO2が発生するのは当然である。すなわち、未来を考慮したエネルギーからは、化石燃料を除外することが求められているのである。

「社会を変える」
イノベーションが必要

 世界の地球温暖化対策の状況を定量的に知るためには、時々行われる国際会議の状況を解析することが有用である。気候変動に関して近年でもっとも重要な国際会議は、19年9月23日に国連で行われた「気候行動サミット」であった。

 この会議に、日本からは小泉進次郎環境大臣が出席していた。しかし、発言の機会は与えられなかった。その理由は簡単で、国のトップが出席していなかったからである。しかも、発言が認められるには基準があったような感触であり、パリ協定後、各国が設定した削減目標を「大幅に上回る対応をする」と表明することが条件であったようだ。実際のところ、トランプ大統領もごくわずか顔を出したが、発言の機会は全くなかった。

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