Wedge REPORT

2021年2月8日

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処理業者の廃業相次ぐも新事業が続々

石渡正佳(いしわた・まさよし) iメソッドフォーラム代表。1981年千葉県入庁。96年から産業廃棄物行政を担当、産廃Gメン「グリーンキャップ」の創設に関与。2001年から不法投棄常習地帯といわれた銚子・東総地域の監視チームリーダーとして短期間で同地域の不法投棄ゼロを達成。主な著書に『産廃コネクション』(WAVE出版、02年日経BizTech図書賞受賞)、『不法投棄はこうしてなくす 実践対策マニュアル』(岩波ブックレット)、『スクラップエコノミー』(日経BP社)、『産廃ビジネスの経営学』(ちくま新書)、『食品廃棄の裏側』(日経BP社)など。

 肥料効果がない、場合によっては畑や地下水、周囲の河川に有害となるかもしれない堆肥は、なぜ生まれるのか。石渡さんは食品業界の利益率の低さと、資金力に乏しい中小企業の多さが影響していると言う。

 「食品工場にしてもレストランにしても、食品業界は競争が激しく、価格をギリギリまで下げることが多く、利益率が低い。加えて、商品が売れないまま在庫廃棄になることも多いから、量の多い廃棄物の処理に金を掛けられない。そのため、食品廃棄物の処理費は他と比べて安い。廃プラスチック類の処理費が1トン当たり3万円くらいなのに対し、食品廃棄物は1万円程度だ」

 良い製品を作るには、良い原料が必要だ。これは、飼料や肥料にも当然、言えること。

 「でも、選んでいたら、廃棄物処理は商売にならない。だから、処理業者は最初のうちは受け入れるものを選んでいるけれども、だんだん何でも受けるようになる。何でも受けると、ろくなものができない。原料を選んでも選ばなくても、結局、経営的にうまくいかなくなって倒産してしまう。生き残るには上手にリサイクルを偽装するしかない」(石渡さん)

 大手企業との取引がありながら、巨額の負債を抱えて倒産した例に、アグリガイアシステム(千葉県)がある。07年に国の交付金も使って日本最大級の飼料化センターを建設。同年にセブン&アイ・ホールディングスと連携し、販売期限切れ食品を飼料、肥料に活用すると発表していた。ところが、堆肥生産が遅れ、廃棄食品の受け入れも伸び悩み、09年に倒産する。交付金の交付元だった農水省は「大変残念な結果になった」(食料産業局バイオマス循環資源課)としている。

 飼料化と肥料化という、食品リサイクルの2枚看板の根幹が揺らいでいるように感じられるけれども、国は食品リサイクルを推し進めている。

 「飲料メーカー、居酒屋や喫茶店のチェーン、コンビニやスーパーなどBtoCの業界では、食品リサイクルが消費者向けのPRになるので、次から次へと、新しいプロジェクトが立ち上がる。でも、結局うまくいかなくて、廃業する。処理設備のメーカーだけは、一つのプロジェクトが10億円、20億円という案件になることもあるので、儲かるけれども」(石渡さん)

 SDGsの目標の12には「2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食料の廃棄を半減させ、収穫後の損失などの生産・サプライチェーンにおける食品ロスを減らす」と定められている。社会貢献、あるいは社会的責任を果たすと掲げての企業の参入は、今後も続くだろう。

 一見、エシカルでエコで持続可能でSDGsな感のある、食品リサイクル。もちろん、真摯に取り組む食品企業や処理業者、農家もいるのだけれども、不法投棄の言い訳に使われることも多いようだ。リサイクルが言葉でいうほど簡単ではないことに、私たち消費者は思いを致す必要がある。結局、食品ロスが出た後で、有効活用するのは至難の業なのだ。賞味期限の最初の3分の1を期限に食品を小売に納入する商習慣「3分の1ルール」を見直す、食べきれないものは作らないといった、基本に立ち戻る必要がある。

  
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