世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2021年2月26日

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 2月4日、英国の放送規制当局であるオフコム(Ofcom:Office of Communications情報通信庁)は、中国の海外向けテレビ放送(CGTN:China Global Television Network)の英国国内での放送免許を取り消した。

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 もともと中国は、極めて活発に対外宣伝活動を展開しており、CNNやアルジャジーラを真似して、テレビでの発信も強化していた。中国国営テレビ(CCTV)の英語ニュースは2000年から活動を開始し、英国でも18年間放送していた。中国は2016年12月、海外向け放送事業を整理統合してCGTNという名称にし、海外24時間テレビ放送を更に拡充させた。

 CGTNは、北京の本部以外に、海外拠点をロンドン(欧州統括)、米国ワシントン、ケニア・ナイロビ(アフリカ統括)に設置し、更に全世界に70以上の支局を有する。英語以外に、フランス語、スペイン語、ロシア語、アラビア語放送もしており、現在100カ国以上で8500万人の視聴者がいる。インターネットでも見ることができる。そして近年、習近平政権の下で共産党の指導が強められていた。

 英国の放送規制当局オフコムは、テレビに公正性、正確性、プライバシー保護などを厳しく求めてきた。英国国内で、中国、イラン、ロシアのテレビが放送免許を得ていたが、様々な処分を受けてきた。2012年には、イランのテレビ局「プレスTV」が英国国内の放送免許を取り消され、2019年には、ロシアのテレビ局「RT(ロシア・トゥデイ)」が、公平性に違反したとして、数十万ポンドの罰金を課された。

 昨年5月、オフコムは、香港の民主化運動についてのCGTNの放送が、中国共産党以外の見解を伝えなかったため、公平性ルールに違反したと指摘した。また昨年7月には、CGTNが、その番組の素材取得に関連してルールに違反したと指摘した。英国の元ジャーナリスト等が中国で逮捕され、強制自白させられ、それがCGTNで放映されたことも問題視されていた。

 今回のオフコムによるCGTNの放送免許取消し決定は、中国にとり大きな痛手だ。人権擁護NGOが、CGTNの放送倫理違反と党派的性格を英放送規制当局に訴えていたことが功を奏した。

 このオフコムの決定に対し、2月5日、北京のCGTN(CCTV)本部に加え、中国外交部王文斌報道官も強く反発した。CGTN本部は、オフコムの決定に遺憾と反対を表明し、CGTN放送は、「客観性、理性、バランスの原則に基づき全世界でニュース報道を展開」との声明文を出した。外交部の王報道官は、「CGTNが中国共産党の支配を受けているというオフコムの指摘は正しいのではないか」との記者の質問に対して、「中国は共産党が指導する社会主義国家である、中国のメディアの属性は、英国側にとっても一貫して明確だ」、「英国側が今になって中国メディアの属性について語り、CGTNの英国での活動を妨害するのは、完全に政治的策動だ」と答えた。王報道官は事実を述べたのだが、これではCGTNの放送内容の「公正性」等を西側の人々に説得することはできない。

 約1年前、中国の活発な対外宣伝活動は、米国でも警戒され、国務省は規制を強化した。昨年3月2日、ポンペオ国務長官(当時)は、中国の公的な5つのメディア機関―ー新華社、CGTN、中国国際ラジオ、『チャイナ・デイリー』(英字新聞)、『人民日報』―ーを「外国ミッション」(大使館、総領事館と同様、スパイ活動も行う機関)と指定し、米国駐在人数を計100人に限定すると発表した。もともと彼らは中国の公用旅券をもって海外赴任していると言われるほど、中国共産党の保護を受けているらしい。

 NGO「セーフガード・ディフェンダーズ」の働きかけが、今回のオフコムの決定に大きな影響を与えているといわれているが、当NGOは、米国、カナダの放送規制当局にもCGTNの問題を同様に訴え、調査結果を待っており、今後の展開が注目される。

 欧米諸国や日本では、中国の宣伝活動はある程度警戒され、CGTNの成果にも一定の限界があるだろうが、途上国ではかなり成果を挙げているとの見方もある。各国が連携して、中国の宣伝活動を観察・分析し、然るべく対応していく必要があるだろう。

 中国国内(一般の家庭や事業所)では、中国当局が許可しないため、米CNN、英BBC、仏TV5、日本のNHKなどの視聴はできない。外国人向け高級ホテル、外国人駐在員向け高級アパートでは視聴できるが、あくまでも例外である。中国国内で外国のテレビに認めない権利を、中国のテレビは外国で享受し、それを失うと声高に文句を言い、対抗措置をほのめかす。実際、今回、中国当局は、2月12日、英BBCの国際放送「ワールドニュース」の中国国内での放映を許可しないことを発表した。実質的に、対抗措置とみて良いだろう。

  
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