エネルギー・電力供給を支える天然ガス
1973年の第一次オイルショックの時点で、世界の一次エネルギー供給に占める天然ガスの割合は16%だった。オイルショックを契機とした脱石油、エネルギー多様化の動きにより天然ガス供給量は一次エネルギー供給量を超える勢いで増加した。2018年時点では、シェアは23%に達している(図-1)。
オイルショック時点では日本の一次エネルギー供給の4分の3以上を石油が占めており、天然ガスは2%しかなかったが、発電部門での液化天然ガス(LNG)使用が増えたこともあり、2018年度の天然ガスシェアは23%に拡大している(図-2)。
発電部門でも天然ガスの発電量は大きく増加した。米国においては2000年代後半のシェール革命によりシェール層から天然ガスを商業的に取り出すことに成功し、競争力のある天然ガス生産量が急増した。生産量はロシアを抜き世界一になり、輸出も可能になった。競争力のある天然ガスの生産量が増加したことにより、米国の発電量の半分を担っていた石炭火力が相対的に競争力を失う地域が増え、天然ガス火力が米国の電力供給を最も担うことになった。2020年実績では天然ガスの発電シェアは40%、石炭は19%となった。
日本への天然ガスの輸出国は豪州、マレーシア、米国など、石油との比較では中東以外にも多様化している。安定供給に寄与するLNG火力は、東日本大震災後の原発からの発電量が減少した結果、約40%の最も発電シェアを持つ電源になった。欧州では、天然ガス火力の発電シェアは原子力の25%に次ぎ21%を占めている。天然ガスの域内生産量の減少が続き今輸入比率は約9割になった。LNGの形で米、アフリカなどからも輸入しているが、主体はロシアからパイプラインでの輸入だ。
いま、先進国では天然ガスが発電の主体になっているが、EUの2030年の削減目標達成のためには、今から天然ガス使用量の削減を開始する必要があるとの見方が出てきた。EUでは依然として天然ガス関連設備の建設が進んでいるが、それらの投資は座礁資産を生むことになってしまうかもしれないとの指摘もある。