2024年11月22日(金)

中東を読み解く

2021年5月21日

バイデン大統領も負け組か

 米メディアによると、バイデン大統領はネタニヤフ首相と停戦まで4回にわたって電話会談した。元々、中東和平の優先度が低かったバイデン氏だが、戦闘が激化しても対応は鈍かった。調停のためブリンケン国務長官を派遣することもなく、会談後のホワイトハウスの発表はバイデン氏が「イスラエルの自衛権を支持した」ということが強調された。

 国連安保理でも都合4回開催された会合では、停戦を求める声明が米国の反対で出すことはできなかった。バイデン氏は国際協調や人権を重視することを強調してきたが、国連の場での国際協調を軽視するような姿勢に非難の声が上がった。さらに、こうしたバイデン氏の停戦調停に消極的で、イスラエルに配慮しすぎる対応に身内の民主党からも批判が噴出した。

 特にイスラエルに対する7億3500万ドルの武器売却について、リベラルな議員を中心に反対する意見が強まった。米紙によると、大統領選挙の党候補指名争いで、バイデン氏と最後まで戦ったサンダース上院議員は「米国の兵器がガザを破壊し、女性や子どもを殺害している時、新たな兵器売却を認めるわけにはいかない」などとして、兵器の売却差し止め決議を準備中だ。

 バイデン氏のイスラエルに甘い姿勢に異議を唱えているのはリベラル系の議員だけではなく、これまでイスラエルの立場を強く擁護してきたシューマー上院院内総務やメネンデス上院外交委員長らも疑問を呈するようになった。こうした党内からの批判を受けたバイデン氏は19日のネタニヤフ首相との電話会談で、「停戦に向けた大幅な緊張緩和を今日期待する」と期限を切って事実上の“最後通告”を突き付けた。

 翌日、ネタニヤフ首相がやっと停戦を受け入れ、バイデン大統領はなんとか面目を保った。しかし、大統領に対する国内外の懐疑論の高まりはバイデン氏のイメージを傷つけることになったのは間違いない。こんな中、最大の勝ち組は調停をまとめたエジプトのシシ大統領だ。かつてのアラブの盟主も最近、影が薄くなっていたが、これをきっかけに発言力を増すかもしれない。

  
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