2022年8月8日(月)

#財政危機と闘います

2021年8月30日

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島澤 諭 (しまさわ・まなぶ)

関東学院大学経済学部教授

富山県生まれ。1994年東京大学経済学部卒業 同年4月経済企画庁入庁。調査局内国調査第一課、総合計画局計量班、調査局国際経済第一課等を経て2001年内閣府退官。02年秋田経済法科大学経済学部専任講師、04年10月秋田大学教育文化学部准教授。15年4月から中部圏社会経済研究所研究部長を経て、22年4月より現職。

高齢世代に搾取される若年世代

 現状の歳入歳出構造が維持され、消費税率が10%のままであると仮定し、試算された表1の結果によれば、少子化、高齢化の進行により、若い世代ほど少ない人数で相対的に人数の多い高齢世代の給付を賄う必要があるため、年齢が若くなるほど生涯純税負担率が大きくなっているのが分かる。

 例えば、2020年に出生した0歳世代の生涯純税負担率は21.9%であるのに対して、その親に相当する世代である30歳世代では12.5%、更にその親に相当する世代の60歳世代では8.2%に過ぎない。これは、現在の日本の財政・社会保障制度においては、少子化、高齢化が進行する中で、負担が勤労期に集中し、引退期に受益が集中する構造となっていることに原因がある。

 20年に生存している現在世代の中での最大の世代間格差は0歳世代と90歳世代の51.2ポイントであり、0歳世代が現在の価値に換算して8600万円以上も多く負担させられることになる。つまり、この負担超過額は、高齢世代が政府を介して若年世代から搾取している金額にほかならず、それはまさに、財政的に幼児が虐待されているかのようだ。

 表1を見ると、20年時点では未出生の将来世代の生涯純税負担率は70.4%と、現在のどの世代よりも重い負担を負う運命にあることが分かる。これは、現在の政府債務残高や毎年の財政赤字などの解消をすべて将来世代に先送りしていることの裏返しである。

 将来世代が一生涯に稼得する所得の7割に相当する金額が現在世代の意思決定により有無を言わさず収奪されているのだ。

 世代会計の試算結果からは、年齢が若い世代ほどより重い純負担を負っていることが明らかになった。しかも、おおむね投票権を持たない将来世代を含む15歳世代以下の「0票世代」の生涯純負担率が大きくなっている。

 0票世代においては、政府を介した世代間所得再分配による年長世代への拠出分が多く、自分たちが使えるお金が少なく、選択肢が限定されてしまっている。日本財政が破綻するしないにかかわらず、世界で最も深刻な日本の世代間格差是正のために、財政再建は実行されなければならないのだ。

  
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