研究開発が強みの源泉
日本国内は人口が減っていくこともあり成熟市場だが、より品質が高く、健康志向の強い野菜へのニーズは高まっていくと読む。サカタのタネの強みはブロッコリーやキャベツなどアブラナ科の野菜類だったが、トマトやきゅうり、ピーマンといった果菜類にも力を入れている。そのためにはなんと言っても研究開発力が欠かせない。
100周年に当たって坂田社長は7項目の頭文字をとった「PASSION」を経営理念として打ち出した。People(人々)Ambition(野心)Sincerity(誠意)Smile(笑顔)Innovation(革新)Optimism(プラス思考)Never give up(不屈の精神)の頭文字だ。その先頭に「人々」を持ってきているように、人材こそが品質や誠実さを支える。連結で約2500人の社員のうち20%程度が研究開発人材だ。
「野菜や花の栽培に、日本は本来向いていない場所なんです」と坂田社長は言う。気候が穏やかで栽培に適しているのではないかと感じるが、実は四季が存在し、台風もあり、湿度が高い日本は、植物にとっては世界の中でも劣悪な環境と言えるのだそうだ。逆に言えば、植物にとって厳しい環境でもよいパフォーマンスを出せる品種(タネ)は世界で通用するということだ。
また、天候に大きく左右される中で、商品であるタネを安定的に採るためにはリスクを分散することが重要だ。年に1回しかタネが採れないものでも、北半球と南半球で生産すれば年に2回採ることができる。サカタのタネの事業がグローバル化しているのにはそんな事情もある。
気候変動が激しさを増す中で、どう品質を守っていくか。サカタのタネの誠実な挑戦はまだまだ続く。
■昭和を引きずる社会保障 崩壊防ぐ復活の処方箋
PART 1 介護 介護職員が足りない! 今こそ必要な「発想の転換」
PART 2 人口減少 新型コロナが加速させた人口減少 〝成長神話〟をリセットせよ
PART 3 医療 「医療」から「介護」への転換期 〝高コスト体質〟からの脱却を
PART 4 少子化対策 「男性を家庭に返す」 これが日本の少子化対策の第一歩
PART 5 歴史 「人口減少悲観論」を乗り越え希望を持てる社会を描け
PART 6 制度改革 分水嶺に立つ社会保障制度 こうすれば甦る
Column 高齢者活躍 お金だけが支えじゃない 高齢者はもっと活躍できる
PART 7 国民理解 「国家 対 国民」の対立意識やめ真の社会保障を実現しよう