2024年4月23日(火)

食の安全 常識・非常識

2021年9月30日

ハイギャバトマトは、オンライン販売開始

 ゲノム編集食品第1号として2020年12月に国への届出を済ませたゲノム編集トマトは、機能性成分ギャバを高蓄積し、通常のトマトの4〜5倍含む「シシリアンルージュハイギャバ」です。

 筑波大学の江面浩教授らが開発し、同大初のベンチャー企業サナテックシードがビジネスを担います。まずは、苗を無料配布して家庭菜園で育ててもらうことにして申込みを募ったところ、5000人を超える人たちが応募。各家庭で今夏、栽培されました。9月15日からは、熊本県内の契約農家が栽培したトマトが青果物としてオンライン販売されています。機能性表示食品としての届出準備も進められています。

 オンライン販売では「ゲノム編集製品であることに同意するか?」と問われ、同意しないと購入へと進めません。3kg7506円(税込み、送料込み)です。

ゲノム編集トマトをオンラインで購入する時に出てくる画面(左)。OKを押さないと、注文へと進めない。右側がオンラインショップで購入したゲノム編集トマト(筆者撮影) 写真を拡大

毒性物質の少ないジャガイモ、発がんリスクを下げるパン……

 日本で商用化に至ったゲノム編集食品は現在のところ、この2品目です。このほか、木下准教授らはトラフグの改良にも取り組んでいます。九州大学なども、おとなしい性格で養殖時の共食いなどが少ないサバを研究しています。また、大阪大学などはジャガイモが自然に作ってしまう毒性物質(ソラニン・チャコニン類)を減らしたジャガイモを、農研機構などは収穫される梅雨時に多く起こりがちな「穂発芽」を抑えた小麦を、東京大学は、花芽形成ホルモンに関わる遺伝子をゲノム編集したイネを研究中です。

 ゲノム編集植物を野外で栽培する場合は文科省に実験計画を報告しなければならず、ジャガイモや小麦、イネは文科省のウェブサイトで書類が公開されています。

 海外でも、特徴のある研究が進みます。たとえば、アミロペクチンというデンプンが多いトウモロコシ「ワキシーコーン」。もちもちとした食感が特徴です。アメリカで研究が進んでおり、農研機構のウェブサイト「バイオステーション」で詳しく説明されています。

 英国の世界最古の農業研究所、ローザムステッド研究所は8月、ゲノム編集小麦をこの秋から野外栽培する、と発表しました。

 この小麦は、ゲノム編集によりアミノ酸の一種、アスパラギンの含有量を大きく下げてあります。小麦粉をパンにしたりトーストしたりすると、中でアスパラギンが糖類と反応し発がん物質アクリルアミドを作ります。ローザムステッド研究所は、「ゲノム編集であれば、小麦のほかの品質を損なうことなくアスパラギンのみ減らすことができ、アクリルアミド産生量が少なくなりパンやトーストの発がんリスクを下げられる」としています。英国政府は、国民の意識調査などをしながらゲノム編集技術の利用に積極的な姿勢を見せています。

EUも、ゲノム編集作物への姿勢を変えつつある

 欧州連合(EU)は従来、司法裁判所の裁定により「ゲノム編集食品は遺伝子組換え生物(GMO)に関する法律に基づき規制される」という立場でした。しかし、この4月、欧州委員会(EC)は「植物におけるゲノムの狙った場所を切って突然変異を誘発するタイプのゲノム編集は、従来育種と同等に安全であり、規制を再検討すべき」という見解を明らかにしました。


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