2024年12月5日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2021年10月11日

 9月24日、2018 年12月にバンクバーで逮捕された華為技術(ファーウェイ、Huawei)のCFO孟晩舟と米国の検察当局との間で司法取引が成立し、孟晩舟は中国に帰国した。本件について9月26日付のウォールストリート・ジャーナル紙が、中国の人質外交の勝利だとする社説を書いている。

 ウォールストリート・ジャーナル紙の社説は本件は中国の人質外交の勝利だとしているが、そのように断定するにはカナダ人の人質(ビジネスマンのMichael Spavorと元外交官のMichael Kovrig)が孟晩舟との司法取引成立の裏の事情であることが立証される必要がある。

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 司法取引への道が開けたのは今年7月のシャーマン国務副長官の中国訪問の際だともいわれているが、それが明らかになることはないであろう。しかし、今秋にはカナダの裁判所が米国への引き渡しの可否の判断を示す見込みとされ、時間が切迫する状況にあって、人質の存在が米国とカナダに圧力として働いたであろうことは容易に想像がつく。

 司法取引は検察当局への協力に対する見返りであることが通例だと思うが、本件はそのような性格のものではない。司法取引の内容も薄い。有罪を認めるではなし、罰金を支払うでもなし、事実認定を違えることをしなければ2022年12月には起訴を取り下げるというが、中国に帰国すれば何とも手の施しようがない。

 ウォールストリート・ジャーナルが言う「中国との外交修復努力の巻き添え」という形容は当たってはいないが、人質外交の勝利かも知れない。しかし、その対応には国内に批判があったが、カナダのトルドー首相は1000日を超える対決に良く耐えたと言うべきであろう。

 もともと問題の焦点は、米国の対イラン制裁に違反するリスクを冒してイランとのビジネスに従事するSkycomとHuaweiとの関係にあった。SkycomはHuaweiの単なる取引相手なのか、それともHuaweiのイランとのビジネスを隠蔽するためのフロント企業なのかということについて、孟晩舟は13年8月の会合でHSBCに虚偽の説明をなし、その結果、HSBCがHuaweiとの顧客関係を続け、対イラン制裁に違反して少なくとも750万ドルの取引に介在したというものである。


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