都市vs地方 

2021年12月1日

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吉田浩 (よしだ・ひろし)

東北大学大学院 経済学研究科教授

高齢経済社会研究センター長。1995年一橋大学大学院博士課程満期退学、97年東北大学大学院経済学研究科助教授、2007年より現職。会計検査院第9代特別研究官、経済企画庁経済審議会特別委員も歴任した。著書に『男女共同参画による日本社会の経済・経営・地域活性化戦略』(河北新報出版センター)、『厚生労働統計で知る東日本大震災の実状』(統計研究会)など。

 先に、大学進学率は50%を超えたと述べた。この性別内訳をみると、男性の大学進学率は57.7%であるのに対して、女性大学進学率は短大まで含めると58.6%と男性を上回っている。ここからすると、男女間での高等教育の差異は解消されつつあり、労働者としての生産性にも差はないといえるのではないだろうか。

 さらに、日本経済の状況も変化してきたことも見逃せない。経済活性化において日本の「モノづくり」が重要であるという主張はしばしば聞かれる。しかし、実際に日本の産業構造の変化を見ると、日本は「モノづくり」から「サービス経済」に大きく変化してきていることがわかる。

 19年度の国民経済計算(GDP)によれば、生産面で見ると第1次産業(農林水産業中心)はわずか1%、製造業中心の第2次産業でも26%である。モノづくりであるこれら2つを合わせて3割以下ということができる。これに対して、サービス業を中心とした第3次産業は残りの73%を占めている。日本経済は、男性の力(ちから)仕事中心の生産からシフトして、女性も就業して活躍できるサービス関連の産業がメインになってきているということである。

 したがって、労働供給の面からも女性が男性と同等の教育を受けてきており、労働需要の面からも、女性が就業しやすい知的労働やホスピタリティの求められるサービス産業が日本のメインストリームとなった今、働く能力と意思を持った女性が社会で活躍できる環境を用意できるか否かが、地域が選ばれるために重要といえる。

「新・三本の矢」のカギは女性のあり方を考えること

 安部晋三政権の下で15年9月にアベノミクスの「新・三本の矢」と題する政策が発表された。その内容は、「GDP600兆円の実現」、「希望出生率1.8の実現」、「介護離職ゼロの実現」であった。そのどれもが、実は女性の就業と表裏一体であることは重要な問題である。

 先に述べたように、日本経済の7割以上がサービス産業を中心とする第3次産業である。そして、看護師、福祉、教育、販売員などサービス産業で従事する女性は非常に多い。

 15年当時のGDPは540.7兆円(15年基準改定値)であったから、「GDP600兆円の実現」のためには10%以上の経済成長を達成しなければならないことになる。そこでもし、効率的にこの目標を達成しようとするならば、国民経済の中でのウエイトの最も大きな第3次産業で、女性がしっかりと働けるようにすることが必要である。

 新・三本の矢の2番目の「希望出生率1.8の実現」も女性に大いにかかわる問題である。大学進学率が60%近くになった今、昔と異なり女性は生涯働くことを前提に就職すると考える方が妥当である。しかし、就業後に子どもをもうけようとするとキャリアが中断され、その後、非正規雇用の条件でしか復職できないとすれば、少子化はもっと進んでいくであろう。

福祉国家から学べるもの

 外国で実際に出生率1.8を達成している国としては、北欧福祉国家のノルウェー、スウェーデン、デンマークなどがあげられる。ノルウェーでは、育児休業中に元の給与の80%が保証され、1年間仕事を休むことができる。さらに重要なことは、復職時に女性が休業前と同じポジションで働くことができるということである。また、男性の子育てのための育児休業が割り当てられている「パパ・クオータ」が設けられていることも大いに参考となる政策である。

 その結果、ノルウェーの統計局の調査では、大学を卒業した女性の方が40歳時点で子どもを持っている割合が高いという結果が出ている。これは日本とは逆の現象として注目に値する。

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