都市vs地方 

2021年12月1日

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吉田浩 (よしだ・ひろし)

東北大学大学院 経済学研究科教授

高齢経済社会研究センター長。1995年一橋大学大学院博士課程満期退学、97年東北大学大学院経済学研究科助教授、2007年より現職。会計検査院第9代特別研究官、経済企画庁経済審議会特別委員も歴任した。著書に『男女共同参画による日本社会の経済・経営・地域活性化戦略』(河北新報出版センター)、『厚生労働統計で知る東日本大震災の実状』(統計研究会)など。

 新・三本の矢の最後の政策目標である「介護離職ゼロ」も女性の就業とかかわりの大きい問題である。『就業構造基本調査』の結果によれば、介護・看護のために仕事を退職または転職した就業者は年間約10万人に上る。そして、そのうち8割余りが女性であるという結果が得られている。

 このように、高齢社会が進行する中で、経済成長、出生率の回復、介護問題の解決のためには、女性が就業と家庭生活の両立、いわゆる「ワークライフバランス」を達成できる社会や地域の構築が必要となってくる。

宮城と広島、働きながら子育てできるのは?

 筆者の住む宮城県は、出生率の低下が続き、最新の20年の統計で合計特殊出生率が47都道府県中46位という状況に至った。宮城県は1995年には47都道府県中36位であったため、この25年あまりで10位もランクを下げたことになる。

 そこで、筆者は宮城県と広島県を比較し、出生率の差異の違いを調べてみることとした。広島県と宮城県はいずれも中国地方・東北地方の中核的地域であり、95年のランキングでは広島県は32位と当時の宮城県(36位)と大きな差はなかった。しかし、2020年は広島県が16位と宮城県(46位)と大きな開きがある。地方の中核地域としての両地方で何が異なるのであろうか。

 本稿の文脈で注目するとすれば、女性が働きながら子育てのできる環境の違いが挙げられる。15年の『国勢調査』の結果によれば、子ども3人以上(最年少の子どもの年齢が3~5歳)の各世帯の中に占める、妻が就業している世帯の割合を見ると、全国および広島県は子どもの数が増えるにしたがって妻の就業率が増加していることがわかる。しかし、宮城県については、子ども数の増加による女性就業率の増加は小さく、女性の子育てと仕事の両立が難しい可能性を示している。

 国立社会保障・人口問題研究所の「結婚と出産に関する全国調査」(15年)によれば、女性の回答した結婚の利点において「子どもや家族をもてる」ことと「経済的な余裕がもてる」ことが調査の年を追うに従って増加している。したがって、女性にとって、結婚しても子どもが持てなかったり、結婚して子どもをもつと仕事が続けられなかったりする社会では、結婚の意味そのものが薄れてきてしまうことになる。

 北欧などの事例や近年の女性の高学歴化、そして結婚に期待する意識の変化を踏まえ、出生率の回復と女性就業を同時に達成する社会や地域を構築することが地域の持続可能性に大きく影響するといえよう。ちなみに、20年4月時点での厚生労働省発表の都道府県別待機児童率では、宮城県が0.76%であるのに対して、広島県は0.06%と10分の1以上待機児童率が小さいことがわかる。

高齢社会で必須となる男女共同参画

 経済成長、出生率の回復、介護問題の解決のためには、女性のワークライフバランスと活躍だけが求められるわけではない。当然に、男性も育児や介護に参画しながら、生産活動に従事していくことが求められる。総務省の公表した地方公務員の統計ではあるが19年度の男性の育児休暇の取得率は宮城県が3.6%であったのに対し、広島県は9.9%と倍以上の取得率となっている。

 このように考えると、男女共同参画社会の実現は、憲法上の男女平等の理念や国際的な男女平等度ランキングでの日本の低迷を背景として語られる側面がある。しかし、より差し迫った問題として世界最高水準の超々高齢社会へ突き進む日本社会の将来の持続可能性の観点から、実施して行かなければならない取り組み事項と位置付けるべきといえるのではないだろうか。

  
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