2024年5月2日(木)

World Energy Watch

2022年1月20日

 我が国は石炭火力を始めとする化石燃料の燃焼技術の脱炭素化で世界に貢献することができるし、少なくとも欧米や中国に圧倒的に差をつけられた再エネで巻き返そうとするよりもずっと勝算の高い戦略であると考える。

アジア諸国との協力に勝機を見出せ

 ただし、こうした石炭火力の脱炭素に向けた技術開発を我が国だけで進めようとしても立ちはだかる壁は高い。外圧に弱い我が国は欧米による石炭排斥の圧力は無視できないだろうし、その結果、成長の見通しが芳しくない我が国の国内市場だけでは技術開発の投資回収に十分なリターンを期待できそうもない。そのため、石炭の利用が多く、経済発展のために安価で安定的なエネルギーを希求しているアジア諸国との連携が重要である。今年1月に政府はインドネシアの石炭火力発電所でアンモニア混焼導入の官民共同事業を進める覚書を締結した。こうした連携を拡大していくことが望まれる。

 アジア諸国との協力によって化石燃料の脱炭素技術の実用化、低コスト化の実現を目指すべきだ。COP26で途上国は経済発展を止めてまで温暖化対策を進めることに明瞭なノーを示した。インドを始めとする途上国は、2020年までに先進国による資金支援を毎年1000億ドルに引き上げるという2009年のCOP15での約束が未達成となったことを強く批判し、COP26では2025年にこの1000億ドルという目標を達成するために努力することが合意された。しかしこの目標を達成しても待つのは単に金額が引き上げられた次の目標だろう。再エネ一本鎗という方策では、途上国のカーボンニュートラルを実現するためにはいくら資金があっても足りないためだ。先進国も自国の対策費用負担も大きく、途上国の支援をどこまで増額できるか、心許ない。

堂々と石炭火力の海外展開を

 こうした点を考えると、途上国に化石燃料の脱炭素技術というオプションを提供することこそが現実的な温暖化対策と言えるのではないか。化石燃料の脱炭素化に成功すれば、対策コストを大幅に削減でき、再エネ一本鎗に偏向する現状の気候変動対策に対して、日本はゲームチェンジャーになれる可能性がある。途上国にも適用可能な脱炭素の石炭火力システムを開発し、堂々と石炭火力の海外輸出停止を撤廃する日を目指すべきである。

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