2022年12月4日(日)

バイデンのアメリカ

2022年1月30日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。著書に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

 同紙によると、世界各国の通商は米国の銀行システムに連結している現状に鑑み、米財務省が「SDN」リストを発表した場合、多くの外国金融機関はロシアの主要銀行との取引が禁止され、結果的にロシア経済に甚大なダメージを与えることになるという。

 西側諸国は去る2014年、ロシアがウクライナのクリミア半島併合に踏み切った際、貿易面などでの対露制裁を科したことがあったが、米政府当局者は「今回の場合、ロシア側に与えるインパクトは深刻さにおいても根本的に異なる」と説明している。

 実際に、財務省の「SDN」リストの中には、すでにロシア最大規模を誇る「Sberbank」「VTB」の2つの銀行も含まれるとされていることから、米政府がこの制裁措置を世界に向けて正式発表した場合、西側の政府機関、主要企業による対露金融取引がほとんどストップすることになる。

追加の経済制裁も検討

 ロシア経済は、全体の30%を占める原油、22%の天然ガスなどの輸出に大きく依存しているが、もし、「SDN」制裁が発動されるとしたら、当該諸国の金融機関を通じた代金支払いが凍結されることになるだけに、ロシアの市民生活にも甚大な影響は避けられない。

 さらには、世界各国の銀行間でクライアントの送金、入金情報を交換する際に必ず使用される「SWIFT コード」と呼ばれるメッセージ・サービスからもロシアの銀行をシャットアウトする措置も打ち出される可能性もある。

 このほか、ニューヨーク・タイムズ紙によると、米政府は追加制裁措置として、①諸外国金融機関による対露融資停止、②ロシア基幹産業向け部品サプライチェーンの遮断、③プーチン大統領側近グループ保有海外資産の凍結――なども検討されているという。

ウクライナ侵攻で想定される3シナリオ

 一方、時間の問題となってきたロシアのウクライナ侵攻に関し、昨年まで米国家安全保障会議(NSC)で欧州部長を務めたアレクサンダー・ビンドマン陸軍少佐は、定評ある国際問題誌「フォーリン・アフェアーズ」(1月21日付け)に重要論文を寄稿、その中で、考えられるロシアによる今後の出方に関し「3つのシナリオ」があるとして、次のように指摘している。

①ウクライナに対する強圧的外交処理=すでにロシア軍部隊が占領中のウクライナ東部のドンバス(Donbas)地区をロシア領として正式承認する。これは、ロシアがグルジアの反政府地区アブハツィア(Abkhazia)、および南オセチア(Ossetia)地区に対してとったものと同様措置であり、すでにロシア共産党が関連法案を国会に上程済み。この措置をとることにより、クレムリンは国際危機と自国への制裁を回避できることになる。

②ロシア空軍部隊によるウクライナ東部地区の追加的占領=とくに、ウクライナ・アゾフ(Azov)海の主要港マリウポル(Mariupol)および主要都市ハルキフ(Kharkiv)を攻略すると同時に、ウクライナの最重要港オデッサ(Odessa)にも侵攻。これにより、ウクライナを対外的に孤立化させる。

③ロシア陸、海、空軍同時投入による全面的ウクライナ占領=最も可能性の高いシナリオであり、この場合、ウクライナ側の反撃を阻止するため、すみやかな制空、制海作戦が求められる。これと同時に、在ベラルーシ・ロシア軍も首都キエフに向けて進軍、防戦に当たるウクライナ軍部隊を東部、および南部に追い詰め、最後に投降させる。占領後、ロシアは長期駐留を避け、ウクライナ国内での内戦化とロシア支持派の台頭を待つ。

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