2022年10月5日(水)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2022年2月18日

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 今年5月、コロンビア大統領選挙が行われる。基本的には、左派、中道派、右派の三つの政党連合の間で選挙戦が争われる構図であるが、元ゲリラでボゴタ市長を務めた左派急進派のペトロが世論調査でも有力で、ペルー、チリに次ぐ南米での右派から左派政権への転換が有力視されていた。

 これまで中道派には数人の有力な候補者がいるが、抜きんでた候補はおらず、右派には特に有力視される候補はいない。世論調査では、1位がペトロ、独立系ポピュリスト候補が右派の支持票を奪い2位につけている状況であった。ペトロは、決選投票に持ち込まれる場合に備えて、その左派的主張を押さえ始めているとも伝えられていた。

Jenny On The Moon / banderlog / iStock / Getty Images Plus

 最近、この選挙についての展望を大きく変える出来事があった。それは、ゲリラ組織「コロンビア革命軍」(FARC)に6年間人質とされた経験を持つイングリッド・ベタンクールがフランスから帰国し、大統領選挙への立候補を表明したことである。

 ベタンクールは、下院および上院議員として国民の人気も高かったが、2002年の大統領選挙キャンペーン中にFARCに誘拐されてしまった。彼女は、ジャングル内のゲリラ基地に拉致されていたが、08年に、FARC内に潜入した政府軍工作員等の劇的な作戦で解放された。解放後、ベタンクールは、二重国籍を有するフランスに事実上亡命し、英国で神学の研究などをしていたが、本年の選挙に出馬のために帰国したものである。

 ベタンクールは、国民和解、「反汚職と環境保護」を重点政策とし、中道派連合に属する緑の酸素党という小党を率いているが、大統領への道のりとしては、3月に行われる中道派の予備選挙に勝つ必要がある。ベタンクールは、国民的知名度は高いが、解放後も10年以上コロンビア政治から距離を置いていたこと、民衆の不満は国内の不均衡にあるが、ベタンクールは富裕な体制派と見られていること、中道派には、元保健大臣のガビリア、元メデジン市長で前回選挙3位のファハルドはじめそれなりの候補が既に選挙運動を展開していることなどから、今からブームを起こすことは難しく、中道派の予備選挙にも勝てない可能性があると見る向きもある。

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