2024年4月24日(水)

都市vs地方 

2022年3月1日

大学進学率の地域別格差が見せるさまざまな側面

 全国平均で大学進学率が増え、大学教育を受ける若者が増えてきたことは喜ばしいことである。しかし、この大学進学率はどの都道府県でも同じように伸びているわけではない。表1は都道府県別に大学進学者数を高校卒業者数で除して求められた大学進学率のうち、進学率の高い5地域と低い5地域を示している。

 この結果を見ると、以下の2つのことが特徴としてわかる。第1に、都道府県別の進学率は高い地域と低い地域でかなり差があり、1位の京都府と47位の沖縄県では30ポイント近くの開きとなっていることである。第2に上位の地域はいずれも大都市を含む地域で、下位の地域は地方の県であることである。

 このような地域別差異が生まれる理由として、大学進学に要する学費の問題が考えられる。地域の標準的な所得の大学進学のための費用負担力を見るため、「県民経済計算」(内閣府)による現在入手可能な都道府県別の「1人当たり県民雇用者報酬」と都道府県別の進学率の関係を概観した(図2)。

 図2を見ると、1人当たり県民雇用者報酬(いわゆるサラリーマンの地域平均年収)が高い都道府県ほど大学進学率が高いという傾向がみられる。このことから、奨学金や高等教育費用負担に対する経済的な支援は大学進学率一般を高めるだけではなく、地方部の進学率の上昇に寄与し、地方の社会を支援することにもつながるといえる。

 もう一つ、都道府県別の進学率に影響を与えると考えられるのが、都道府県別に設置されている大学数の差である。2021年度の全国の大学数は803校であった。そのうち、17.8%が東京に設置されている。内訳をみると、国立大学の東京設置割合は14.0%であったが、私立大学は20.8%だった。相対的に大学は地方よりも東京に設置されていることがわかる。

 地元に存在する大学の数が少なければ、進学率にマイナスの影響があるのであろうか。学力的には東京に進学することができても、上京や下宿のための費用がかかかるのであれば、経済的制約を高め、進学率を抑制する可能性も考えられる。

 そこで、大学の地域間での設置の差と進学率の関係を検討することとする。ただし、大学によって規模や在籍者数に違いがあるため、単に大学数とせず、都道府県別に「高校卒業者数に対する各大学の在学学生数の割合」として求めた「大学収容割合」と進学率の関係を見てみることとする(在学学生数は全学年を含むため、ここでは便宜的に在学学生数を4で除した独自の指標)。

 図3を見ると、横軸の大学収容割合が高いほど縦軸の大学進学率が高くなっている傾向がみられる。しかし、収容割合の低い地域では収容割合の増加に対して、縦軸の大学進学率にかなりばらつきがみられる。すなわち、同じ程度の「大学収容割合」に対して、高い進学率を見せているところもあれば、低い進学率にとどまっているところもある。

 また、横軸右端の2地域(右端は京都府、その左が東京都)では、大学収容割合が高いにも関わらず、自地域の進学率がそれに見合うほど高く示されていない伸び悩み傾向を示している。このことは、東京の高い大学収容割合が東京都ではなく、他の地域の進学率に寄与している可能性を示すと考えられる。自県の大学収容割合が低いにもかかわらず、相対的に高めの進学率が実現している地域では、自県に存在する大学ではなく、他の都道府県に設置されている大学に進学している可能性がある。


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