2024年4月25日(木)

都市vs地方 

2022年3月1日

県外進学パターンに見える地域に必要な施策

 図3に示された結果から、地元の大学の収容定員の増加と進学率に齟齬があることが分かった。実際に大学に進学するとしても、地元ではない他の地域に進学する状況はどのようになっているのであろうか。

 これを知るために、同じ「令和3年度 学校基本調査」(文部科学省)から、地元の都道府県の大学への進学率を集計した。ここでの地元進学率は、出身高校の所在地別の大学入学者数の統計から、出身高校の都道府県と進学した大学の都道府県が一致した大学生をその都道府県出身の学生数で除したものである。

 ここでは、出身高校の所在地別の大学入学者数を基準としているため、高校卒業生のうち「大学に進学した学生」の大学地域選択を見ていることとなる。したがって、その地域の大学進学率の高低の問題とは別に議論できることとなる。

 表2の結果から、以下の2つのことが指摘できる。第1に地元進学率は地域別に相当の格差があり、トップの愛知県で7割以上となっているのに対して、地元進学率の低い地域では2割を切る水準となっていることである。

 第2に地元進学率の高い地域はいずれも大都市圏であり、低い地域は地方圏であるということである。同じ資料から、地元進学率の低い5県について、その進学先の内訳を見たものが表3である。

 表3を見ると、地元進学率の小さい5つの県の中でも、県外進学パターンに大きな違いがあることがわかる。1つは佐賀県、奈良県などのように進学先の第1位が近隣の大都市を擁する県であり、かつその比率が4割前後とかなりの比率を占めているパターンである。

 この場合は、佐賀県は進学の地域的なグルーピングとして福岡地域圏内、奈良県も京阪地域圏内とみなすことができる。これらの地域は経済的な結びつきも深く、政策的に一体として考えることができるといえる。

 次に、香川県、鳥取県など地元進学率は低いものの、自県内が1位であり、これに近隣の大都市圏が続いているパターンである。これらのパターンでは地元志向が低いものの、第1として選択されており、地元大学の充実も視野に入れた政策が考えられる。島根県は、広島県が進学先の第1位となっているが、地元島根県への進学率とほぼ同様の数値であり、基本的には、香川県、鳥取県パターンに近いとみなされる。


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