2022年10月8日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2022年3月16日

»著者プロフィール

 ドイツは、防衛政策の歴史的な大転換に踏み出そうとしている。契機となったのは、言うまでもなく、ロシアによるウクライナ侵略である。

Kagenmi / iStock / Getty Images Plus

 ロシアによるウクライナへの侵攻の深刻化に伴い、ドイツは遅まきながら国ロシアの国際決済システムSWIFT(国際銀行間通信協会)からの排除の支持に転じ、ロシアとの間のガス・パイプライン「ノルドストリーム2」の認証手続きを停止し、ウクライナへの兵器の供与を決定するなどしてきたが、最も重要な動きは、2月27日のショルツ首相による連邦議会での演説である。この演説で、ショルツ首相は、防衛政策、およびそれに密接に関連するエネルギー政策の歴史的な転換を表明した。

 ショルツの演説の主要点は、凡そ次の通りである。

(1)国防費を今後毎年国内総生産(GDP)比2%超に引き上げる。

(2)ドイツ連邦軍向けに1000億ユーロの基金を設置。

(3)F-35戦闘機を導入し、トルネード戦闘機を置き換えることを検討。これは、核シェアリングの担保となる。

(4)武装ドローンなどの実戦兵器を購入する。

(5)北大西洋条約機構(NATO)の枠組みでのバルト諸国、東欧への貢献の拡大。

(6)再生可能エネルギーへの投資を増やしつつ、戦略的な石炭や天然ガスの備蓄についても投資。
(7)液化天然ガス(LNG)ターミナルを建設し、天然ガスの調達先を多角化、対露依存(現在は5割超)を低減させる。

 ショルツは、「自由と民主主義を守るために、安全保障により多くの資金を投じなければならない」と述べている。ショルツの方針転換には、NATO重視に舵を切ったという大きな意味がある。

 国防費をGDP比2%以上にするというのは、2014年の英ウェールズでのNATO首脳会合で約束された国際合意だが、ドイツの国防費は1.5%程度にとどまってきた。方針転換は、ドイツ政治においても歴史的な意味がある。その内容は、戦後のドイツ人の間に強く根差してきた反戦・平和主義の転換を求めるものであり、2月27日付のForeign Policy誌(電子版)掲載の論説‘Putin Accidentally Started a Revolution in Germany’が端的に指摘する通り、「革命的」と言える。

新着記事

»もっと見る