電気料金はこれからどうなる
4月6日現在、日本で登録されている新電力の事業者数は752社だ。このうち200社は、現時点では販売を行っていない。
残りの事業者の中で大手電力の1割程度の販売量を持つ企業は数十社だ。新電力が販売電力量に持つシェアは、21年12月時点で、全国平均21.7%。家庭用中心の低圧では23.8%だった。
化石燃料価格が乱高下する中では、卸市場に依存する新電力の経営環境は厳しくなる一方と考えられる。安定供給と消費者向け電気料金の安定化を図るための方策が必要だが、事態は不安定化を増すように動いている。
ロシアのウクライナ侵攻により、欧米諸国は化石燃料のロシア依存度引き下げに乗り出している。EU諸国の化石燃料消費に占めるロシアのシェアは、天然ガスで約4割、原油で3割弱、石炭で2割弱だ。
この化石燃料を他の供給国に求めるとなると、当然需給を引き締め、価格を引き上げることになる。日本などの化石燃料輸入国は、EUの脱ロシア産エネルギーの余波を受けることになる。
例えば、EUがロシアに代わる石炭供給国の一つと考えるのは、日本向け石炭供給の7割を担う豪州だろう。石炭価格は上昇すると考えられる。
既に、石炭価格はロシア侵攻後から大きな上昇を見せている(図-4)。EUが脱ロシアを進めれば、これからも石炭価格は大きく上昇することになるだろう。発電量の約3割を石炭火力に依存する日本にとって影響は大きい。
加えて、日本政府はロシア産石炭の輸入量を削減すると発表した。欧州委員会は120日の猶予期間を設けて輸入を禁止する方針だ。
契約上簡単にロシアからの輸入を禁止可能か不透明だが、仮に禁止すれば、電力市場に影響が生じることになる。セメント、紙パルプなどの一般産業と呼ばれる企業が持つ自家発電で消費されているロシア炭の量もかなりあると思われるが、発電量の余剰は、新電力と契約されているケースが多いのではと推測される。ロシア産の石炭が輸入禁止になれば、他の石炭を手当てすることになるが、受け入れ可能な船の大きさの問題から価格が上昇し電気のコストにも影響がありそうだ。
化石燃料価格を見通すことが難しくなってきた。今まで、価格競争力があった石炭も今後の不透明感が強い。公共設備向けの電力供給の入札に応札者が現れないほど将来のエネルギー価格、電気料金の見通しを立てることが難しい時代を長く続けることはできない。
電気料金の上昇はさまざまな影響を与える。供給の安定化と競争力のある電気料金のためには原子力の活用を避けることはできない。フランス、英国のように新設に乗り出す必要がある。
地球温暖化に異常気象……。気候変動対策が必要なことは論を俟たない。だが、「脱炭素」という誰からも異論の出にくい美しい理念に振り回され、実現に向けた課題やリスクから目を背けてはいないか。世界が急速に「脱炭素」に舵を切る今、資源小国・日本が持つべき視点ととるべき道を提言する。
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