近づく放漫財政の限界と世代間闘争の勃発
しかし、現在は状況が変わった。
資源価格の高騰や更なる円安への調整によって、いまのまま財政赤字を垂れ流すだけでは、高インフレと国債価格の暴落により日本財政は破滅的な危機を迎えるだろう。政治家も国民も薄々勘付いていると思うが、いつまでも財政ファイナンスは続けられないから、バラマキも持続的ではない。
もし、財政が破綻すれば22年度当初予算で考えれば、少なくとも約37兆円もの財源を確保しなければならない。それは増税か歳出削減によってしか達成できない。
しかし、増税といっても、所得税なのか消費税なのか、歳出削減といっても、年金なのか、教育なのか、防衛費なのか、産業振興なのかによって、世代や所得階層によって被る影響は全く違ってくる。最悪の場合、世代×所得階層間での闘争が起きる可能性がある。
しかも、そうした闘争に嫌気がさした現役世代も高齢世代も資産やスキルがある者は国外へ避難し、現役世代も高齢世代もスキルも資産もない者たちが荒涼とした日本に取り残される。想像以上に破滅的な未来が待っている。
輸入インフレが懸念され、日本周辺の権威主義的諸国が軍事的圧力を強める中、将来の日本国民に、経済的にも財政的にも焼け野原となった日本を遺すのか、それとも以前ほどの力強さはないものの、全ての世代が協調して生活し続けられる日本を遺すのかは、今のままの放漫財政を続けるのか否か、偏にわれわれの選択にかかっている。
そういう意味で、次の参院選は今後の財政、ひいては日本の未来を占う分岐点となるだろう。果たしてバラマキたがる政治と欲しがる国民からの脱却は実現するだろうか?
『Wedge』2021年1月号で「破裂寸前の国家財政 それでもバラマキ続けるのか」を特集しております。
日本の借金膨張が止まらない。世界一の「債務大国」であるにもかかわらず、新型コロナ対策を理由にした国債発行、予算増額はとどまるところを知らない。だが、際限なく天から降ってくるお金は、日本企業や国民一人ひとりが本来持つ自立の精神を奪い、思考停止へと誘う。このまま突き進めば、将来どのような危機が起こりうるのか。その未来を避ける方策とは。〝打ち出の小槌〟など、現実の世界には存在しない。
特集はWedge Online Premiumにてご購入することができます。
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