2022年10月7日(金)

経済の常識 VS 政策の非常識

2022年4月16日

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原田 泰 (はらだ・ゆたか)

名古屋商科大学ビジネススクール教授

1974年東京大学農学部卒業、博士(経済学)。経済企画庁、大和総研チーフエコノミスト、早稲田大学特任教授などを経て、2015年から日本銀行政策委員会審議委員を5年間務めた。20年4月より現職。『なぜ日本経済はうまくいかないのか』(新潮選書)など著書多数。
 

 過去10年平均で毎年0.314%ずつ増加していたトレンドで人口が増加したと仮定した場合との差を考えると、22年までに87万人の人口を失ったことになる。ギリシャの人口は1063万人(22年)であるから、8%の人口減である。

ギリシャでアベノミクスをしていたら

 ギリシャの経済危機とは財政が危機であったことではなく、財政が危機だと思って極端な財政引締め策を取ったことから生まれた。もし極端な財政緊縮をしていなかったらどうなっていただろうか。

 財政赤字を対GDP比15.3%のままというのはさすがにまずいと考えて、政府支出を09年の1285億ユーロに固定する。その程度ではインフレになると言われるかもしれない。極端な緊縮策によってデフレになっているから、緊縮策を取らなかったらインフレになっていただろう。

 ここでインフレ率が3%(GDPデフレータで)になったとしよう。すると税率を同じにしておいても、毎年名目の政府収入は3%ずつ増加する。11年後の20年には政府収入は1280憶ユーロとなって財政均衡する。いやもっととんでもないインフレになるという人もいるかもしれない。しかし、10%のインフレなら政府収入は毎年10%増加する。3年余りで政府収入が1285億ユーロを超えて財政均衡する。この方が良かったのではないか。

 いや、そううまくいくはずがないという人もいるかもしれない。しかし、これはアベノミクスで実証済みの方法である。多くの人がなぜか認めないのだが、12年末の第2次安倍晋三内閣の発足以来、物価上昇率がマイナスからプラスに反転、名目GDPが増加したことにより税収が増加、12年からコロナ以前の18年までで一般政府の財政赤字の対名目GDP比は8.5%から2.7%にまで5.8%ポイントも縮小した(2019年は消費税を増税したにもかかわらず財政赤字が3.1%と拡大しているので18年の数字を採用した)。

 うち、消費税増税による改善は1.5%分しかない。ギリシャにもアベノミクスが必要だったのではないか。もちろん、アベノミクスは金融緩和政策が第1の矢だからこれができたので、ギリシャはユーロを使っていて自国通貨を持っていないのでこれはできないという批判があるだろう。しかし、ヨーロッパ中央銀行がもっと緩和的な金融政策を採っても良かった。少なくとも、ギリシャにロシア並みの制裁を課すことはなかった。

  
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