2022年12月8日(木)

#財政危機と闘います

2022年4月19日

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島澤 諭 (しまさわ・まなぶ)

関東学院大学経済学部教授

富山県生まれ。1994年東京大学経済学部卒業 同年4月経済企画庁入庁。調査局内国調査第一課、総合計画局計量班、調査局国際経済第一課等を経て2001年内閣府退官。02年秋田経済法科大学経済学部専任講師、04年10月秋田大学教育文化学部准教授。15年4月から中部圏社会経済研究所研究部長を経て、22年4月より現職。

インフレは私たちを貧しくする

 したがって、インフレ率が2%であるということは、私たちのお金の実質価値が2%減じたということであり、私たちの購買力が2%低下したのである。要するに私たちは2%貧しくなったのだ。

 これはインフレによって必ず生じる事態であり、例外はない。したがって、インフレは他の条件が一定であれば必ず私たちを貧しくするのだ。

 例外は、インフレ以上に所得や資産が増える場合に限られる。先の例で言えば、2%のインフレが生じたならば、所得や資産が2%以上増えない限り貧しくなる。

現実に貧しくなっている日本人

 厚生労働省「毎月勤労統計」によれば、2021年時点の名目賃金指数は0.3%増加、一般消費者物価指数(総合)で実質化した実質賃金指数0.5%増加なのだが、携帯料金調整後の生活実感により近い実質賃金は-0.4%と20年に比べて貧しくなっているのが分かる。

(出所)厚生労働省「毎月勤労統計」、総務省統計局「一般消費者物価指数」より筆者作成 写真を拡大

 図1によれば、携帯料金調整後の実質賃金の変化率を見ると、21年6月からマイナスを続けている。さらに、連合によれば(「中小組合が多く回答引き出し「賃上げの流れ」を堅持~2022 春季生活闘争 第 4 回回答集計結果について~」)、4月12日時点の春闘賃上げ率は0.62%に過ぎず、しかも、携帯料金引き下げの効果は4月からは剥落し、エネルギー価格や食料品の高騰の影響は今後本格化してくる。このままの勢いでインフレが進めば3%程度になると予想され、今年の実質賃金は21年よりも2%以上下落し、私たちの生活は確実に厳しくなることが見込まれる。

 しかも、こうした賃金の低迷を受けて、年金支給額も引き下げられており、現役世代だけでなく高齢世代の生活も苦しくなっている。

政府が躍起になる物価対策は不要

 このように、国民全般がインフレ禍に苦しんでいるとして、政府は今月末までの物価対策の策定を進めているし、経営者も国民もそしてエコノミストさえも「一刻も早い物価対策を!」との大合唱だ。現時点では、政府の物価対策がどのようなものになるのか詳細は不明ではあるものの、報道によれば、予備費を使った、原油高対策対応への補助金の拡充、低所得者への給付金などが検討されているようだが、筆者は、大方の考えとは逆に、基本的には物価対策は不要であると考える。

 なぜ筆者がそう考えるかは、第1次石油ショックの経験を現在の「第3次石油ショック」にも生かせるし、補助金や給付金頼みの物価対策が日本経済復活の芽を摘むと考えるからだ。

 第1次石油ショックは、1973年10月に勃発した第4次中東戦争を契機として、突如、石油輸出国機構(OPEC)が原油の供給制限と輸出価格の大幅な引き上げを行い、国際原油価格が4倍に引き上げられたことで、他の先進諸国同様、日本経済は深刻なダメージを受けた。

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