EUは石油輸出国機構(OPEC)に対し増産を打診したが、OPECは「ロシアの供給を代替するには1日当たり700万バレル以上の増産が必要になるが、対応することはできない。5月から当初予定通り1日当たり43万2000バレルの緩やかな増産を行うのみ」と回答したと報道された。EU諸国はロシアからの原油・石油製品の輸入量を5月15日頃から減らす予定との報道もあるが、実現するかどうか不透明だ。
ロシアからパイプライン経由で供給されている天然ガスを、他の供給源から調達することは、さらに難しい。米国産液化天然ガス(LNG)の輸入量は増加しており、EUのLNG輸入量はロシアからの輸入量を上回り始めたが、大きなシェアを持つロシア産天然ガスを全て代替することは難しい。
EUの化石燃料輸入におけるロシアのシェアは図-1の通りだ。国際エネルギー機関によるロシア産天然ガス依存度削減策(『欧州の脱ロシアで輸出先が中国になるって本当か?』)に続き、欧州委員会も脱ロシア産化石燃料の具体案を5月に発表する予定だが、短期間での脱ロシアはやはり難しいだろう。一方、ロシアもEUの脱ロシアの動きに備え始めた。
ロシアのEUに代わる輸出先はどこか
ロシアは世界の天然ガス輸出市場の20%、石油市場の10%、石炭市場の20%のシェアを持つ(図-2)。ロシア・プーチン大統領は4月14日、石油と天然ガスに関する会議を主催し、「欧州が脱ロシアを図ることは合理的ではないし、短期的にはロシアの天然ガス、石油なしでは欧州は立ち行かない」と発言し、脱ロシアは市場の不安定化と価格上昇を招くだけだとEUを牽制した。
だがロシアも、欧州市場に大きく依存しており(図-3)、EU諸国が脱ロシアを図るならば大きな痛手を被ることになる。プーチン大統領は、ロシア産化石燃料の新市場としてアフリカ、アジア太平洋、ラテンアメリカを挙げ、新市場開拓のためのインフラ整備について6月1日までの報告を求め、特に、中国向け天然ガス供給のパイプライン、パワーオブ・シベリアとサハリンからハバロフスク、ウラジオストクを結ぶパイプラインに関する報告が必要とした。