基本、陽性者が「入院」は前提だが
当然、在宅であれ介護施設においても、要介護者がコロナに感染すれば、医療機関へ入院といった対応が前提となる。そのためには、今から要介護者用の受入れ病棟を確保すべきだ。
一般患者と異なり、要介護者は認知症などの徘徊、寝たきり高齢者の排泄・食事介助など、医療機関にとっては療養負担が増す。そのため、感染拡大時においても一部の一般病棟の空床はあったものの、要介護者の受入れは非常に消極的であった。
医療機関側も忙しく、要介護者を受け入れてしまうとマンパワー不足が引きおこされてしまう。その意味では、要介護者の入院を想定した病床数を一定程度確保して、人員配置を厚くした受入れ機関を設けるべきと考える。
医療機関に入院できたとしても、「フレイル」「心身の機能低下」といった懸念が残る。元気な高齢者もしくは軽度要介護者がコロナ陽性によって医療機関に一定程度入院すると、ベッドでの生活が基本となり、運動や会話が極端に減る。コロナ感染は治癒しても、入院したことで心身機能の低下が悪化してしまい、退院時には車椅子の生活になってしまうケースも考えられる。
その意味では、要介護者向けの医療機関の整備に際しては、入院期間中のリハビリ機能を併設しておかなければならない。1週間後には退院することが見込まれる患者(要介護者)において、在宅生活の復帰を前提とした治療・療養プログラムを考えていかなければならない。現在のコロナ感染者のための入院機関(医療施設)は、健常者を前提とされており「リハビリ」機能が考慮されたケアはなされていない。
再度の感染拡大にむけて要介護者のための医療機関の受入れ体制の強化は急がれるが、「リハビリ」といった視点を忘れてはならないであろう。
必要な在宅サービス強化という視点
しかし、全ての在宅要介護者の感染者を医療機関へ入院させることは絶対に不可能である。その充分な体制整備の見込みは想定しづらく、多くは感染者したならば在宅介護を継続せざるをえないであろう。そのため、これまでの経緯を踏まえて心身の機能低下を少しでも回避できる対策を、今の段階から考えていくべきである。
具体的には、在宅介護におけるサービスの利用継続を促す施策が求められる。実際、感染した要介護者がデイサービスやデイケアに通所することは不可能であろう。そのため、感染した要介護者に対しては、自宅に介護スタッフが訪問して何らかのケアを継続して心身の機能低下を図っていかなければならない。デイサービスの介護スタッフが充分な感染対策(防護服)を講じて訪問するなどが考えられる。
しかし、そのようなきめ細かな対応は、介護人材不足によって空想化するに違いない。まして、現行の介護報酬では収入面においても不可能である。