米国のバイデン大統領が提唱した「インド太平洋経済枠組み(IPEF:Indo-Pacific Economic Framework for Prosperity)」が5月23日に発表され、日本、米国、豪州、インド、ニュージーランド、韓国、シンガポール、タイ、ベトナム、ブルネイ、インドネシア、マレーシア、フィリピンの13カ国が参加してスタートした。
まず、この「枠組み」の内容だが、特徴的な点がある。というのは、自由貿易を前面に打ち出した環太平洋経済連携協定(TPP)とは全く異なって、理念的な項目が4つ盛り込まれているという「作り」となっているということだ。
項目別に見てゆこう。
見えぬ理念の意義と具体性
1点目は「公平で強靭(きょうじん)性のある貿易」だ。声明文(内閣府の翻訳による)には
「我々は、ハイ・スタンダードで、包摂的で、自由かつ公正な貿易に係るコミットメントの構築を追求し、経済活動を活性化し、持続可能で包括的な経済成長を促進し、労働者と消費者に利益をもたらす幅広い目標を推進するために、貿易・技術政策において新しく創造的なアプローチを発展するよう努める。 我々の取組は、それだけではないが、デジタル経済における協力を含む」
という方針が掲げられている。
表面にある美辞麗句は別として、この項の主旨としては、最新技術に関する国際分業を、中国を含めて行う場合に、知財をコピーされないようにプロテクトするということだろう。だが、同時に参加国の間でも同様に「独自技術の囲い込み」を誘発したり、先端分野における国際協業そのものに対して、各国財界が萎縮する危険がある。参加国が足並みを揃えてのブレークダウンの作業は意外と難航しそうだ。
2点目は、「サプライチェーンの強靭性」だ。具体的には、
「我々は、より強靭で統合されたサプライチェーンとするために、サプライチェーンの透明性、多様性、安全性、及び持続可能性を向上させることにコミットする。我々は、危機対応策の調整、事業継続をより確実にするための混乱の影響へのより良い備えと影響の軽減のための協力の拡大、ロジスティックスの効率と支援の改善、主要原材料・加工材料、半導体、重要鉱物、及びクリーンエネルギー技術へのアクセスを確保するよう努める」
という。これも分かりにくい考え方だ。