2024年4月27日(土)

ビジネスと法律と経済成長と

2022年7月5日

他のペット関連サービスにもある法律の壁

 ペット民泊以外にも、お散歩代行マッチングサービスや、IoTを活用したスマート犬小屋のシェアリング等、海外では認められているサービスも国内で展開しようとすると、ペット民泊と同様に動物愛護管理法上の問題が生じてしまう。

 お散歩代行のマッチングサービスは、ペットの預かりではなく、散歩という作業を代行するものであり、物を預かるという「保管」には含まれないと思われるものの、現状はペット民泊と同様、第一種動物取扱業の登録を受けないと有償で行えないとされている。

 ペットの散歩は、ペットの健康及び安全にとって有益なことである。保管事業者と散歩代行のみの事業者とではリスクの程度は当然のことながら大きく異なる。散歩代行事業者に対する教育、逸走時対策等が適切に行われること等の条件を付すことで散歩代行事業が第一種動物取扱業を取得することなく実施できるようにすべきという考え方もあり得るところであろう。

 また、海外ではIoTを活用したスマート犬小屋が広がりを見せている。これは、利用者がダウンロードしたアプリでドアの施錠等をコントロールする犬小屋で、室温を一定に保つエアコンを完備し、飼い主が買い物中でもペットの様子をアプリ内の室内カメラからリアルタイムでモニターできるものである。これも国内で展開しようとすると、上記お散歩代行と同様「保管」という扱いを受ける可能性があり、その場合には、第一種動物取扱業の登録を受けた上で、スーパーなどの設置場所ごとに動物取扱責任者を置いて犬小屋を監視させなければならないことになってしまう。

 ペット民泊や散歩代行は、確かに当該ペットの急病や第三者に対してけがを負わせてしまうリスクをゼロにできないものの、買い物の際のスマート犬小屋であればデジタル庁が推進する「情報収集の遠隔化」や「自動化・無人化」にも資するはずである。

動物愛護に限られない人とペットの関係

 「いくら新しいテクノロジーが開発されても、それを受け取る社会のほうも変えていかなければ、新しいテクノロジーが活きること」はないし、「社会の中で新しいテクノロジーをどう包摂するか」(馬田隆明『未来を実装する』1頁)が重要である。

 「テクノロジーをうまく受け入れて活用できる社会」を創っていくのはわれわれ自身であるし、そのためにも、われわれ自身が「社会を理解し、ときには社会を変えていく必要」(馬田4頁)があるのではないか。

 最近、全国各地で大規模な地震も増えてきており、首都直下型地震や南海トラフ巨大地震も、いつ発生してもおかしくない状況である。東日本大震災の際は、ペットを避難場所に同伴できず、一人は避難所、一人は車の中でペットとともに生活するという住民が多くいたと言われている。

 自動車の保有率が低い首都圏において、ペットを飼う住民が避難所で適切な住環境を確保することができるのか……。現状のままでは相当厳しい状況に陥ることは想像に難くない。

 その意味では、防災民泊その他の災害時のレジリエンス強化にもつながる施策も含めて、ペットと飼い主の住む社会の安寧、そしてペットの住環境の整備という観点から、幅広い議論が今必要とされている。本稿が、われわれ自身がペットとの関わり合い方について再度考えてみる機会を設けてみるよいきっかけとなれば幸いである。

   
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