2024年11月22日(金)

未来を拓く貧困対策

2022年9月2日

 「思ったより多い。ヤングケアラーのための支援策が必要だ」というのが報道や政府の受け取りである。社会を見渡しても対策に向けた機運が高まっているように感じられる。政府もプロジェクトチームを設け、対策に乗り出している。

 しかし、今回の民間団体の手による実態調査は、より深刻な現実を突きつけた。学習支援事業に取り組む同団体の活動に参加する子どもたちのうち、約4人に1人(23.6%)がヤングケアラーであるという。更に生活保護世帯に限定すれば、その割合は4割(40.3%)に達する(図表1)。

(出所)彩の国子ども・若者支援ネットワーク「2021年9月実施子どもへのアンケート調査――学習教室に参加している子どもの状況」を基に筆者作成 写真を拡大

 なお、朝日新聞調査では、困窮世帯が7人に1人(14.1%)、生活保護世帯が約4人に1人(24.4%)と報じている。この数値の取り方は、実態調査への視点が異なることから生じている。この点は、後ほど詳しく説明していきたい。

 実態調査を行った彩の国子ども・若者支援ネットワーク(通称:アスポート)は、埼玉県で困窮世帯に対する学習支援事業に取り組んでいる。学習支援事業は、以前、内閣府調査の記事でも取り上げた生活困窮者自立支援制度のなかのメニューのひとつである(「内閣府の子ども貧困調査が描き出す『不都合な現実』」)。

 同団体は、生活困窮者自立支援制度ができる前、2010年から困窮世帯に対する学習支援事業に取り組んでおり、アウトリーチ(訪問型支援)の導入など、制度創設にも大きな影響を与えた。今回の実態調査も、今後のヤングケアラー対策に影響を及ぼすかもしれない。

ひとり親、精神疾患、外国籍、不登校、虐待…積み重なる不利

 「調査結果に驚きはありません」――。元代表で今も支援の最前線に立ち続ける白鳥勲(76歳)さんは何でもないことのようにいう。

 「アスポートの学習教室に参加している子どもたちは、ほとんどがひとり親世帯です。うつ病などの精神疾患で働けず、家事も満足にすることができない親は珍しくありません。

 外国籍で日本語が不自由なため、子どもが代わりに通訳をする。学校の先生や行政の職員もそれを当たり前のものとみなしている。決まった時間に起こしてくれる、身支度を整えてくれる、学校の宿題をみる、学校からの連絡帳に目を通して必要なものを整える――。一般家庭では当然のこととされることが難しい親が多い。

 洗濯も十分にできないから、学校に行けば『臭い』と言われる。子どもにとって『臭い』と言われるのは、『学校に来るな』と言われるのと同じことです。学習教室にくる子どもたちのうち約2割は不登校です。親から十分なケアを受けられないネグレクト(育児放棄)、暴言や暴力を受けている子どもたちもいる。

 学習教室参加者でこうしたひとり親世帯の子どもたちの割合はおおよそ一般世帯の5倍から6倍くらい。家庭に兄弟がいれば年上の子どもが面倒をみるしかない。ヤングケアラーが同じ調査結果になるのは、当たり前なのです」


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