9月27日に安倍晋三元首相の国葬が執り行われ、何ごともなく終了したのは良いことだった。吉田茂元首相の1967年の国葬以来、55年ぶりだったから、国葬を巡ってさまざまな議論がなされるのは当然だろう。
安倍首相が7月8日に暗殺されて間もなくは国葬に賛成する人は多かったものの、圧倒的というほどでもなかった。NHKの世論調査によると、国葬の実施を決めたことに関し、7月は、評価するという人は49%、評価しないという人は38%だった。これが8月の調査では、評価するが36%に、評価しないが50%になり、9月では、評価するが32%に下がり、評価しないが57%に上がった(「WEB特集 若者が見つめた安倍氏の「国葬」」NHK2022年10月1日)。
この傾向ははどの世論調査でも同じで、7月末または8月上旬の調査で、国葬反対は46%~53%、これが9月の調査で52%~62%に上昇した(「安倍元首相国葬「反対」各世論調査で軒並み増加 9月は全ての媒体で過半数に」東京新聞2022年9月25日)。
安倍内閣の支持率は、2012年の再登場時には6割を超えていた。その後、上昇するときもあったが徐々に低下し、平均で見れば50%を上回る程度だったのではないか(NHK世論調査)。すると、国葬に賛成する人と反対する人が拮抗するのは当然のことである。
国葬を行うべき理由は現首相が説明すべきもの
総理大臣の国葬が、半世紀に1回ぐらいあるものであれば、筆者は国葬に賛成である。筆者のエコノミストとしてのアベノミクスの評価は、本欄2022年7月12日「今、改めてアベノミクスを考える」に書いてある。加えて、日本の安全保障の強化に果たした貢献が大きい。
アベノミクスについても安全保障の強化についても反対する人が多いのは承知しているが、特に安全保障について、日本が何もしなければ世界が日本を敵視することはないという発想には賛成できない。こういう発想は、大人しくしていればいじめっ子に目を付けられないという議論に等しいと思う。