2024年4月20日(土)

お花畑の農業論にモノ申す

2022年11月2日

 米穀機構の調査によると一般消費者のコメの購入経路の比率はスーパーからが52%を占めているのに対して、米穀専門小売店から購入する人はわずか2.1%しかいない。生産者からの直接購入4.5%、ネットから購入8.9%よりも少ないのである。

 しかも米穀小売店は原料玄米を仕入れる方法に苦心しなければならなくなった。食管時代は米穀小売店が出資者となった事業協同組合系のコメ卸が存在したが、現在はそうした事協系卸はほとんど淘汰されて量販店を主な販売先としている卸ばかりが生き残っている。

 こうした時代の流れにより、今や米穀小売店と一口に言ってもその業態はさまざまなものになっている。外食店ばかりにコメを納入しているところもあれば、地域に密着して周辺顧客を取り込んでいるところもある。また、全国各地のこだわったコメを宅急便で取り寄せて、それらを「お米好きの消費者」に紹介、遠方からの顧客を引き寄せているところもある。ただし、どういう業態の小売店でもコメの仕入れには苦労しているというのが実態だ。

 コメの仕入れが出来ないという事態は米穀小売店にとってまさに死活問題で、この問題を正面から打開すべく立ち上がった組織がある。

「東京で売れるコメ」のブランド化と仕入れを両立        

 それは東京の米穀小売店で組織される東京都米穀小売商業組合(東米商)である。東米商では「東京で売れるコメ」を組合員が仕入れられるようにするため昨年から「東京米(マイ)スターセレクッションKIWAMI米コンテスト」という事業を始めた。

 これは全国各地のコメを取り寄せて、官能テストでその年収穫されたコメのうち品質・食味の優れたものを選ぶ。「東京米(マイ)スターKIWAMI米」というブランドで販売する。

東米商独自デザインの米袋(筆者撮影)

 具体的には2021年産米では全国から70点がエントリーして、金賞として16点が選ばれ、このうち3点が最高金賞米として表彰、それらを東米商独自デザインの米袋で販売した。22年産米は68点がエントリーして、米生産者と米穀小売店の商談会「東京米スターセレクッションKIWAMI米2022商談会」の席で金賞米の表彰式が行われることになっている。

 22年産米では新しく「プロ向け用KIWAMI米」という業務用米コンテストも行われることになり、10点が選ばれる。米穀小売店にも、一般消費者を顧客にするところもあれば、販売先はほとんど外食店という業務用米に特化した小売店もある。

 業務用に特化した小売店の場合、熾烈な納入価格競争が行われており、競争相手は同業他社にとどまらずコメ卸や産地の集荷業者、さらには直売農家も含まれる。こうした競争相手と戦うにはどうしても「価格」が最優先課題で、22年産米の場合、玄米60キログラム当たり1万3000円程度が目途になる。

 こうした価格帯で仕入れられるコメをプロ向け用KIWAMI米として選ぶことにしている。もちろんこうした業務用のコメだけではなく、米穀小売店がこだわっているコメの中には60キログラム当たり6万円もする有機JAS認証を得たコメもある。こだわったコメの価値を一般消費者にちゃんと伝えるのも米穀小売店ならではの役割で、そうした専門的な知識を磨き、その知識に基づいた〝評価〟を与えながらコメを仕入れている。


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